「魚の飼育」と言うと、家の中でガラス水槽やフィルターを使用したアクアリウムのイメージが強いかと思います。
しかし、最近は品種改良されたメダカが人気になったことで、屋外で水鉢を使用した魚の飼育というジャンルを楽しむ方が多くなってきました。また、園芸を趣味にされている方の中には、水鉢にスイレンを植えて、そこで金魚を飼育するという方も多いのではないでしょうか?
屋外での魚の飼育となると、安全性の観点からフィルターやヒーターなどの電気を使う設備の使用は難しくなりますが、金魚やメダカであれば電気設備が無くても飼育は可能です。
しかし、屋外で魚の飼育をする場合には、日本の四季の気候変化を考えた飼育・管理をしなければなりません。
特に金魚やメダカの飼育をされている方は、餌やりの方法や量を春夏秋冬で変化させることが必要になります。
この記事では、屋外水槽での金魚・メダカ飼育に関して、餌やりの方法で考慮すべきポイントを紹介したいと思います。
金魚とメダカには胃袋が無いので餌の量は飼育者が管理する
私達人間の体には胃袋があり、食べたものを胃袋で消化するという機能が備わっています。
しかし、魚の中にはお腹の中に胃袋を持っていない魚が多くいます。
例えば、秋の味覚であるサンマには胃袋がありません。また、同じく海の魚であるイワシやトビウオにも胃袋がありません。
このように、胃袋が無い魚の事は「無胃魚 (むいぎょ)」と呼ばれますが、実は金魚とメダカもその一員です。
金魚の祖先である鮒 (フナ) も無胃魚であるため、突然変異で赤くなった金魚にも胃袋が無いんですね。
そして、品種改良で生まれて来た多くの金魚達も胃袋を持っていません。
金魚とメダカが無胃魚であることは、今回の記事に関する重要な特徴になるので、金魚に胃が無いことは覚えておいてください。
胃袋が無いという特徴は、実は飼育する上で注意が必要な事なんです!
胃袋が無ければ満腹中枢もありませんし、腸に入るだけ餌を食べ続けます…。
そのため、金魚やメダカは自分の体に似合わない量の餌を食べます。餌を食べる量を自分で制御できませんので、飼育者である私たちが管理してあげなければなりません。
食べすぎて消化できなかった餌は、消化不良の状態で糞となって排泄されます。このような状態が続くと、消化不良による体調不良や病気の原因になることが懸念されます。
魚の餌やりの方法として「5分で食べきれる量」という表現をされている場合がありますが、5分ってすごく長い時間です。5分もあれば金魚は相当な量の餌を食べることになるので、餌の量は時間管理では無く、食べた餌の量で管理すべきなのです。
魚の消化能力は水温に影響されます
体温が環境の変化に寄らず一定の動物を恒温動物、環境変化で対応が変化する動物を変温動物ということは学校の理科の授業でも習ったかと思います。
金魚とメダカは魚類であり変温動物になりますので、生活している水温によって体温が変化します。
実はこの体温の変化は魚の活動に大きな影響を与えます。
春から秋の温かい時期には金魚やメダカは水鉢の中を元気に泳ぎ回っており活動的ですが、冬の時期は水底でじっとしておりほどんど活動が見られません。
この活動の違いは魚の消化能力にもダイレクトに影響を与えます。
春から秋の水温が高い時期の日中は消化能力が高い状態を維持しますが、冬の寒い時期には消化能力が顕著に低下している状態になります。
屋内の水槽で年間を通じて一定の水温で管理されている場合には、消化能力が常に一定になるので餌やりの方法や量は換える必要性がありません。
しかし、屋外での飼育の場合には、以下で紹介する通り、水温や消化能力の変化に応じた餌やりを検討していく必要性が出てきます。
各季節ごとの餌やり方法・タイミングについて
では、各季節ごとの餌やりの方法や量などについて考えていきたいと思います。
下記の方法は、私が実際に実施している方法でありますが、あくまでも参考になりますので、皆様の飼育環境においてはそれぞれで最適化してあげて下さい。
① 春の季節 (3月~5月)
冬の寒い時期が終わり、徐々に気温が上がるにつれて、屋外の水鉢内の水温も上昇していきます。
冬の間には数℃であった水温も春になれば10℃を上回る日が続くようになります。
この水温上昇に伴い、金魚やメダカの活動量も徐々に上昇していきます。
しかしながら、3月の初旬は朝の気温が10℃を下回るような日がありますし、まだまだ水温が低い状態になります。
日中は気温が20度近くまで上がりますが、水温は気温よりも変化がゆっくりになるので、暖地であっても3月に水温が20℃近くになるようなことは稀です。
したがって、朝の時間帯は金魚やメダカの消化能力はまだまだ低い状態になりますので、この時間に大量に餌を与えると消化不良になる恐れがあります。
そのため、餌やりは少しでも水温が温かくなる時間帯を選ぶべきです。具体的には早朝7時くらいの餌やりは出来れば避けて、水温が上がる10時くらいからがベストです。
ただし、仕事の関係で朝早くに餌を与えないといけない場合も有るかと思います。そのような場合には、なるべく出掛ける直前に与えるということを心掛けていただければOKかと思います。
② 夏の季節 (6月~9月)
6月の梅雨時期に入ると、最低気温でも20℃近くになるため、水温は春に比べて高い状態が続くようになります。しかし、梅雨前線による雨が多いため水温が不安定になることが多い時期です。
梅雨明け以降の日中は40℃近くまで気温が上がる日もあるため、屋外の水鉢は涼しい所で管理することも必要になる時期です。しかし、真夏は夕立が多くなるので、高くなった水温が一気に下がるという現象が起こりやすいのも特徴的な時期です。
そのため、梅雨時期から夏の期間は、総じて水温は高いが水温が雨の影響で変化しやすいという状況になります。
したがって、日の出から日没のまでの間であればどのタイミングでも餌やりができる環境と言えますが、出来れば水温が上がり過ぎない朝や夕方の時間が餌やりに適した時間帯と言えます。朝と夕方であれば水温が25℃前後になるので、魚にとっては適温と言える時間帯になり、消化能力も安定する時間帯になります。
夏の時期に注意が必要なのは降雨の直後です。
日中に水温が上がった状態で夕立が降ると水温が一気に下がります。降雨によって高すぎた水温が下がり、単純に考えれば、魚の適温になっているように思えます。しかし、急激に水温が下がった直後の環境になるので、魚の体温が水温に合わせて変化している最中になります。
そのような状況では、魚の消化能力も変化している最中になるので、餌やりは避けてあげるべきだと考えます。
夏の時期の餌やりは、水温が適温で安定している朝や夕方の時間帯であることと、水温変化が起きた直後を避けることを意識するようにすると魚の消化不良を防ぎやすくなります。
③ 秋の季節 (10月~11月)
暑い暑い夏が終わり、涼しい秋の季節になると、水温は20℃から25℃で安定しやすくなります。
「行楽の秋」「食欲の秋」と言う言葉があるように、魚にとっても最も活動しやすい時期なのかと思います。
この時期については、1日を通じてどの時間帯でも餌やりは可能で、魚たちも来る冬に向けてしっかりと栄養補給をしておきたい時期と言えますね。
秋の注意点は、気温の下降と共に餌の量を少なくしていくこと、そして気温が下がり始めたらなるべく温かい時間帯に餌を与えることです。
11月も後半になると水温がかなり下がり始めるので魚が水底でじっとしている時間が増えてきます、そのような状況で餌を与えても消化不良を起こす懸念があります。
餌を与えれば食べると思いますが、魚の活動量を見ながら餌の時間と量を変更していくことが必要になります。
元気に食べているからと言って与え過ぎると、実は消化不良になっている…ということが起こりやすいのも秋の気温降下時期の特徴です。
④ 冬の季節 (12月~2月)
冬の時期は見て分かる通りですが、金魚やメダカの活動量が一気に低下します。
最高気温が10℃を下回るようになると、人が近づいても動くことがほとんど無くなってきます。
餌を与えても餌に気付かない魚も出てくるくらいの活動量低下になるので、餌の食べ残しが無いことを確認しながら少量ずつ餌やりをしていく工夫が必要になります。
餌を与えるタイミングも、昼間の最も気温の高い時間帯がベストですね。
餌の量については、春から秋の間に与えていた餌の量に比べ、1/3かそれ以下に減らしていくことになるかと思います。
また、屋外の魚の飼育では、水鉢に氷が張ることもあります。寒冷地であれば、冬の間は氷が張りっぱなしの場合もあるかもしれません。
氷が張ってしまうと、魚の健康状態の確認や生存の確認が難しくなるので、出来れば氷の張りにくい場所に移動する等の対処も必要かと思っています。私の家は暖地にありますが、氷が張りにくい南面の一番温かな場所で管理するようにしています。
大きなお腹を持つ「らんちゅう」や「琉金」は餌やりに注意が必要
金魚は長い品種改良の歴史の中で、様々な体型を持つ品種が誕生してきました。
先祖である鮒の体型が近い「和金」、和金のヒレが長くなった「コメット」、目が飛び出た「出目金」、丸く長いヒレが特徴的な「琉金」、背びれが無くなってしまった「らんちゅう」など…様々な品種がいます。
それらの中で、お腹の大きな金魚は特に餌やりの注意が必要です。
金魚は上述の通り、胃袋が無いため与えたら与えただけの餌を食べてしまいます。特にお腹の大きな金魚は食べる量が多くなりがちになります。
そして、お腹の大きな金魚というのは、私の経験上ですが、餌を食べ過ぎたことによって「転覆状態」に陥りやすいです。
もともとお腹が大ききな金魚は、お腹に浮力が少しある状態になるため、一般的な浮上性の餌を食べすぎると消化不良によってお腹が浮いてしまう状態になります。
その結果、正常な泳ぎが出来ずに、体がひっくり返ったり、横向きになるという症状が現れます。
私の過去の記事でも、餌の食べ過ぎによる転覆病を紹介したものがあります。
転覆状態は、餌を食べてから数時間すると治る傾向にあるのですが、餌の与え過ぎには本当に注意が必要です。
特にお腹の大きな金魚は、消化能力を超えるような量を一度に大量に食べさせないことが重要になります。
転覆状態になるというのは餌の与えすぎが一因の場合があるので、餌を与えた直後は金魚を観察してあげて、泳ぎ方に変化が無いかをチェックしてあげて下さい。
浮上性の餌では無く、比重が少し重い沈下性のある餌を与えることで転覆状態になるのを防ぐ効果もありますが、基本的な転覆状態の予防は餌の量の制限です。少ない量の餌を小分けにして与えることも有効です。
お腹の大きな金魚を屋外で飼育されている方は、餌の与え方には本当に注意してあげて下さいね。
この記事の終わりに
今回の記事では、屋外飼育の金魚やメダカについて、季節ごとの餌の与え方や餌のタイミングの注意点を紹介させていただきまいた。
屋外で飼育するということは、日本の四季の変化を加味しながら魚の状態を把握して飼育するということになります。そのため、屋外での魚の飼育は、室内で管理するアクアリウムよりも難しい技術になると感じます。
魚は水温によって体温が変化し、その結果として消化活動も影響を受ける生き物になります。
魚の体調や消化能力を常に把握することは難しいですが、最低限必要な知識を知り、餌やりの工夫をしてあげることが魚の健康状態を維持する上で重要な事です。
これから屋外飼育をされる方、これまで何も考えずに屋外飼育をされていた方にとって、少しでも御参考になれば幸いです。