10月も後半になると秋が深まりを見せ始め、最高気温も20℃前後まで下がってきます。
そして冬の到来に伴って、アクアリウムの飼育環境も季節に併せて変更していかねばなりません。
秋に用意し始めるアクアリウム用品と言えば「ヒーター」になりますが、皆様は金魚の水槽にはヒーターを使われていますか?
金魚は日本古来の魚になりますので、冬を生き抜く力がありますが、敢えてヒーターを使った方が良いのでしょうか? 私自身は、金魚の水槽にもヒーターを使うようにしています。
この記事では、金魚水槽にヒーターを使用するメリットや、高水温による魚の体調の変化についても紹介したいと思います。
金魚は低水温でも飼育可能
冒頭でも記載しましたが、金魚は日本の暑い夏も寒い冬も自然の中で生き抜きます。
金魚は日本の固有種である鮒 (フナ) が突然変異で赤く変化したものを、人の手によって固定化された種類になります。
そのため、元を辿れば日本の四季の変化の中を生き抜く生態を持っている魚になります。
実際、私が子供の時、冬の池にヘラブナを釣りに行った時に、20cm以上に大きく成長した金魚を釣ったことがあります。誰かが池に放流した金魚 (和金でした) が、その池で大きく成長したものだと思います。普通のヘラブナと同じくらいの大きさで、色が真っ赤だった記憶が今でも残っています。
金魚すくいでも有名な和金は、1年では20cmまでは成長しないため、数年間はその池で生き延びた金魚なのだと思います。
その池は、冬は気温が0℃付近になり、水温も数℃になります。それを考えると、冬の室内でヒーターを使用していない水槽 (水温が10℃前後) では余裕で生き抜くことができるということになります。
そのため、金魚の水槽にはヒーターを絶対に使用しなければならないということは無いのです。しかし、この記事では冬の金魚水槽にヒーターを使うメリットを紹介しておきたいと思います。
金魚水槽にヒーターを使うメリット
では、冬季の金魚水槽にヒーターをセットするメリットを紹介していきます。ここで紹介する以外にもメリットはあるかと思いますが、私が考えるメリットを3つ紹介したいと思います。
金魚が冬でも元気に泳いでくれること
基本的に、魚は水温が低くなると体温も低くなるため、冬の間は動きが鈍くなります。そして、水面付近では無く水底でじっとしている状態が長くなります。
これは水槽の中に限ったことでは無く、自然の世界でも同じことが言えます。自然の池で育つ金魚は、冬の間は、水底でじっとしてあまり動かずに冬を越します。
アクアリウムは水槽を泳ぐ魚を観賞することが目的ですので、魚がじっとしていて動かない状態では鑑賞性が下がってしまいます。特に金魚の様にヒレが長い魚は、水槽内を優雅に泳いでくれてこその鑑賞魚になるので、年間を通じて元気に水槽内を泳ぎ回って欲しいものです。
ヒーターを使用して冬場でも水槽内を元気に泳ぎ回ってもらうことで、餌もしっかり食べて、綺麗な赤色の発色が一年間維持されるということにも繋がります。
そう考えると、金魚の水槽にも冬の間のヒーター設置は必要かと思います。
以前の話になりますが、冬季にヒーターの設置されていない水槽で飼育されている金魚を見たことがあります。しかも屋外の水槽でした。その水槽の金魚は、人が水槽の前に来ても底の方でじっとしていて動かない状態でした (冬眠状態の様な印象でした)。鑑賞性が落ちてしまって、少し残念な印象が残ったのを今でも覚えています。
適正水温は金魚の成長を促進できる
成長速度は低すぎても高すぎても成長速度が下がります。
温度が低くなればそもそも体が活性化して成長しない状態になりますので、成長は鈍ります。これは理解しやすいことかと思います。
また、高水温になると実は下でも紹介しますが、魚の消化器官の働きが鈍くなったり、消化が十分に行われずに排泄されることが知られています。そのため、摂取した餌が効率良く成長に使われないため、成長が鈍ることがあります。
しかし、20℃から25℃の適正な水温を維持できれば、金魚の体調も良くなりますし、人口飼料の消化を助け、成長を促進できる水温となります。
冬の間もヒーターを使うことで適正な水温を維持できますので、金魚を年間を通じて成長させることができます。金魚に早く成長してほしい方は、冬の間はヒーターを使ってあげた方が良いかと思います。
混泳させている熱帯魚も冬越し出来る
金魚水槽に熱帯魚を混泳させている方もいらっしゃるかと思います。
家の中に水槽を多数設置することは難しいので、同じ水槽の中で複数の魚種を飼育している方は意外にも多いのではないかと思います。
金魚と熱帯魚を混泳させている場合、飼育環境は基本的に熱帯魚に合わせて整備していくことになります。
金魚は水温が10℃以下でも生きられますが、熱帯魚は水温が10℃では生きられないものが多いです。また、金魚は溶存酸素量が少し少なくても耐える力がありますが、熱帯魚は酸素不足で命を落としてしまうこともあります。
飼育環境を熱帯魚に合わせるということは、一般的に考えたら当たり前のことではあります。しかし、以前、金魚水槽の中でコリドラスを飼育しいる方にお会いし、冬にヒーターを使わなかった結果、コリドラスが残念な結果になったと聞きました。皆さんも、熱帯魚と金魚の混泳時には注意してください。
白点病の予防に効果絶大
金魚の病気で最も有名なものが「白点病」です。
金魚の表皮に白いブツブツした出来物が出る病気なのですが、ウオノカイセンチュウという難しい名前の細菌が原因で起こります。
このウオノカイセンチュウですが、水温が25℃以上になると活動が止まります。そして、逆に水温が下がると活動が活発化して白点病が出やすくなります。
そのため水温を上げるだけで白点病に罹りにくい環境を作ることができます。
金魚の美しい魚体を維持するため、白点病を抑制するためにも、冬場のヒーターの役割は重要だと考えています。
ヒーターの設定は何度くらいが良い?
金魚や熱帯魚の適正水温は20℃から25℃になります。多くの淡水アクアリウムでも、このくらいの水温で管理されている方が多いのではないでしょうか。
金魚は上でも紹介したように、10℃以下の冷たい水温でも生き延びる能力を持っているので、ヒーターは不要ではありますが、使うとしたら20℃から25℃の間くらいが適正かと思います。
ヒーターを使うのは冬の期間になりますので、金魚にも日本の四季を感じさせるためにも夏の水温より低い20℃前後で管理するというのも、良い事かと思っています。
水温が高すぎることは金魚の体に弊害を生む可能性がある
30℃を越えるような水温は、一般的に魚の体調を崩してしまう原因となります。
夏の室内アクアリウムは、高温の室内によって水温が30℃を越えていくことが多々あります。実はこの時、魚の体に異変が出てしまう可能性がある状態になっています。
以下で、高水温によって魚の体に生じる弊害の一部を紹介します。
魚類は水温によって体温が変わる変温動物になります。水温が高くなれば魚の体温は上がりますし、水温が低くなれば体温が低くなります。
そのため、水温の変化によって、魚の体内の各臓器の働きが大きな影響を受けるのです。
例えば、高水温になると消化器官の消化能力が落ち、消化不良に陥って体調を崩してしまうことがあります。消化不良になれば十分に栄養を体内に供給できなくなります。この体調不良によって腹水病や松かさ病を併発する場合もあります。
また、体温が上がると魚の体を形成する肉に異常が出てくることも知られています。適正水温の時には肉が締まっており正常な状態にありますが、高水温になると肉が崩れやすい状態になり、外傷を負ってしまったような状態になります。そのため、水槽内で石や流木などのレイアウトに接触した時に、魚の体が傷つきやすい状態になり得ます。
このように、高すぎる水温は魚の体に悪影響を与えますので、冬に限らず必ずヒーター使用時は適正水温で管理してあげてください。
金魚水槽にヒーターを使わない場合のメリット
冬場に金魚水槽にヒーターを設置しないメリットを考えた時、私自身はその確固たるメリットをあまり考えられませんでした。
敢えて言うならば、ヒーターの電気代がかからないこと、そして金魚を日本の四季の中で自然体で飼育できることかと思います。
電気代と言っても、水槽用ヒーターはそこまで電力を使う装置では無いので、家計を圧迫するようなことは無いかと思います (水槽の数が多くなれば話は別ですが) 。
また、ヒーターも性能がある程度良いものを選ぶと5,000円程度はするので、その購入のための出費が抑えられるのは嬉しい事かもしれません。
しかしながら、ヒーターを使えば冬の間も金魚が元気に泳ぐ姿を見れるというメリットの方が大きいので、私自身はヒーターを設置した方が良いかと思います。
ただし、室内の温度が常に15℃以上あるような部屋 (常に暖房の効いた部屋) ではヒーターは不要かもしれません。
この記事の終わりに
本記事では、冬場の金魚水槽にヒーターを使用するメリットについて御紹介をさせていただきました。
室内のアクアリウムは、飼育している魚が元気に泳ぎ回ってくれることが鑑賞性を上げるポイントにもなりますので、冬場にも金魚を元気に泳がせるためにはヒーターの設置は必要かと思います。
ただし、高水温にしすぎると金魚の体調に悪影響があります。水温は水温系でモニターし、適正水温を維持することは必須の管理となります。
この冬は金魚水槽にヒーターを設置して、冬の間も元気に泳ぐ金魚を鑑賞してみてはいかがでしょうか?