【アクアリウム】白点病を高水温で治した実例の紹介

熱帯魚や金魚の飼育を楽しむ「アクアリウム」。

自分の好みのレイアウトで作り上げた水槽の中を、お気に入りの魚たちが泳ぐ姿を見る時間は、飼育者であるアクアリストの特権とも言える時間です。

私自身も仕事終わりに帰宅した後、自分で作り上げたレイアウト水槽を泳ぐ熱帯魚の姿を眺める時間は、一日の中での一つの楽しみの時間となっています。

そんなアクアリウムですが、魚という生物を飼育することになりますので、犬や猫の飼育と同じように「病気」は付き物になります。

魚体の表面に現れて目で確認できる病気もあれば、魚の体内で病状が進行し目視では確認出来ない病気もありますが、総じて言えることは魚病は非常に厄介であるということです。

街にある動物病院では、基本的に哺乳類である犬や猫の診療が主となり、熱帯魚や金魚の病気を専門で見てくれる先生は身近にはいないと思います。

そのため、アクアリウムにおける魚病は、基本的に飼育者である皆様が治療をしなければなりません。

数多くある魚病を知り、その病気に対する的確な治療を行うことの難しさは、熱帯魚の飼育の中でも最も苦労することだと思います。

この記事では、そんな魚病の中でも最も有名な病気の一つである「白点病」に焦点を当て、飼育水の水温を上げることで治療を進めるという方法を実例と共に紹介したいと思います。


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白点病の原因と実際の症状

白点病は「ウオノカイセンチュウ」と呼ばれる寄生虫が原因で発症する魚の病気の一つになります。

実際に白点病に罹患したカージナルテトラが次の写真となります。

体側や鰭に白い点がたくさん見られるかと思いますが、この白い点状の出来物の中に上述のウオノカイセンチュウが潜んでいる状態となります。

ウオノカイセンチュウは、寄生した魚の中で成虫となり、その後で寄生した魚から離れて (シスト化と呼ばれています)、別の魚にも寄生するというサイクルを繰り返します。

そのため、水槽内の魚に1匹でも白点病が発生すると他の魚にも白点病が移ってしまうため、水槽内の魚全体に白点病が蔓延するという事態になります。実際に、下で紹介する白点病の事例では、水槽内の多くの魚に白点病が発生してしまった例となります。

また、ウオノカイセンチュウは水温が25℃を下回る水温で活発に活動をすることも知られており、26℃以上の水温では活動が低下します。そのため、ヒーターを使うことが無い日本古来の淡水魚 (金魚やメダカなど) は冬に発症することが多く、水温がヒーターで常に高く維持される熱帯魚は罹りにくいという傾向があります。

ウオノカイセンチュウに、このような特徴があるため、今回の記事では高水温で白点病を完治させるということにトライしてみました。

白点病が蔓延した60cm水槽の実例と状況

まず最初に、白点病が蔓延してしまった筆者の管理する水槽について、その状況を紹介しておきます。

水槽の設備としては以下の通りですが、一般的な60cm水槽と言える設備・管理状況かと思います。

・水槽サイズ:60cm規格水槽

・フィルター:外部フィルターのエーハイム 2213

・水槽用ライト:アクロ製 Triangle LED

・水温:年間を通じて25℃~26℃

・換水頻度:週1回、1/3程度を交換

・水草レイアウト水槽(ロタラ、クリプトコリネ、ショートヘアーグラスがメイン)

この水槽で、20匹程度の小型カラシン科の熱帯魚を飼育していたのですが、2021年8月後半に2匹のカージナルテトラに白点病の症状が出始めました。

水温が26℃くらいだったので、白点病の蔓延は無いだろうと思っていました。放っておいても治るだろう…と。

しかし、その5日後には飼育している魚の半分くらいに白点病が蔓延してしまう状況になりました。

最初に白点病が出た2匹を放っておいたことに後悔した瞬間でもあります…。

白点病は上で記載の通り、25℃程度では活動が低下しますが、26℃ではまだまだ蔓延する可能性があるということになりますね…。

蔓延してしまった白点病を完治させるため、今回の記事で紹介する方法 (高水温) で治療を開始することとなりました。

参考のために、実際に白点病に罹患した魚たちの写真を掲載しておきます。

下の写真はカージナルテトラですが、写真に写っている3匹全てに白点病の症状があることが分かります。

また、次の写真はレッドファントムテトラですが、こちらも体中に白点病の症状が出てしまっています。


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白点病が蔓延してしまった原因の推測

白点病が蔓延してしまった水槽ですが、水槽内のレイアウトを1年前に変更してから、1度も白点病が発生していない水槽でした。

年間を通じて25℃~26℃の水温を維持していることもあり、白点病の発生を抑制できていたのだと思います。

しかし、白点病が発生した数日前に、水槽内に植栽している水草の種類を変更するため、既存の水草を抜き取るという作業をしていました。

その際に、水槽の底に敷いているソイルの中から、魚やエビの糞などが大量に舞い上がる事となりました。

白点病の原因として考えられることとしては、このレイアウト変更の際にソイルの中に溜まっていたウオノカイセンチュウが水槽内に巻き上げられ、熱帯魚に寄生して白点病を発症させたということでは無いかと思われます。

また、一時的でも水槽内の環境が悪化したことも原因の一つとして挙げられます。

水温は25℃以上に維持していたとはいえ、ソイルの中に潜んでいた一部のウオノカイセンチュウが活動をしており、それらが運悪くカージナルテトラに寄生して白点病を発病したということかと…。

今回は水温を上昇させて白点病を治療 -そのプロセスの詳細-

ここからは、白点病の治療の方針や実際の治療のプロセスについて記載していきます。

水温上昇での白点病治療を選んだ理由

まず最初に、今回の白点病治療で高水温を用いた治療を選んで理由ですが…

① 白点病に罹患した魚が多い事

② 水草やフィルターの事を考えて水槽に薬を言えることは避けたいこと

という2つの理由です。

レイアウト (水草や流木など) が無いベアタンクであれば、水槽に直接薬を入れてしまう事もありかと思いますが、水草を育成している水槽の中に薬を入れる勇気がありませんでした。

また、白点病に罹患した魚が多いので、別の水槽に移動して治療をするというのが少し難しかったことがあります。

そのため、できれば薬を使わずに、魚を水槽から移動せずに済む方法を選びたかったというのが理由です。

その結果として、高水温を用いた白点病治療を選ぶこととなりました。

水温上昇による白点病治療プロセス

水槽の水温を上げて白点病を治療する際に、注意しておきたいことは、急激に水温を上げないということです。

魚は変温動物になりますので、水温が上がれば体温が上がり、体内の臓器などの活動量が変化します。

急に水温が上がることは魚体に負担をかけることになるので、一般的には1日当たり1℃くらいの速度で温度上昇をさせて水温を上げることが望ましいです。

しかし、白点病を早期に治療するという観点では、なるべく早く水温を上昇させたいところです。

1日に1℃の温度上昇の場合、25℃から30℃まで水温を上げるのに5日を要します。

そこまで白点病を放置できないというのが事実かと思いますので、私の個人的なやり方としては、半日くらいで1℃程度を目安に水温を上げて、2日くらいかけて約30℃の水温に上昇させました。

また、高すぎる水温は逆に熱帯魚にとっては命に関わることなので、水温は30℃付近を上限にしています。(人によっては、白点病治療で水温を31℃~32℃に上げる方もいるらしいですが、私個人的には30℃くらいを上限にしています。)

水温を約30℃程度に上げたら、白点病が治まるまで30℃をキープします。

白点病が治まったら、水温を通常の温度に下げていくことになりますが、水温を下げる場合にも1日に1℃くらいのペースで下げてあげてください。


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2週間後に白点病が治まったことを確認

水槽の水温を約30℃に上昇させてから、約10日後になりますが、白点病の治療が進んで魚たちの体からは白点病の白い斑点が消えてきました。

下の写真が治療開始から10日後のカージナルテトラとなりますが、魚体に発生していた白い斑点がかなり消えて、綺麗な体に戻っていることがわかります。(水中に見える白い点は、飼育水中の細かなゴミが写真に写り込んだものになります。)

ただ、まだ少し背ビレの付け根辺りに白点病が残っているので、引き続き高水温を維持して治療を進めていきます。

そして、2週間後になりますが、この水槽の全ての熱帯魚から白点が消えて、治療を終えることができました。

1匹の魚もお星様になることは無く、無事に治療を終えることができて一安心です。

今回の治療では2週間の治療期間でしたが、白点病の度合いや水槽環境によって治療期間は変化します。今回の記事での2週間と言う期間は、あくまでも参考例としてお考えいただけましたら幸いです。

白点病治療完了後の水槽の管理

次に、水温上昇による白点病の治療が終わった後の水槽の管理について、追加でお話しておきたいと思います。

高水温による白点病の治療は、高水温によって白点病の原因菌であるウオノカイセンチュウが活動をストップしている状態を作り上げた状態になります。

魚の体からは白点病の症状が消えたとしても、水中や底層のソイルの中などには、その活動を停止したウオノカイセンチュウが潜んでいることになります。

この活動を休止したウオノカイセンチュウは、活動できる水温になれば再び活動を再開することが知られています。

そのため、高水温の状態でウオノカイセンチュウを水槽外へ出すため、換水することが望ましいです。

換水すると同時に、ソイルの中の汚れも吸い出すことで、水槽内のウオノカイセンチュウの数を確実に減らすことができます。

この時の注意事項ですが、毎日の換水量は水槽内の水量の1/3を目安にすること、そして新しい水は水温を30℃程度に調整したものを導入することです。

換水量が1/3程度であれば、水槽内の環境を大きく変化させることは防げますし、30℃の新し水を用意すれば水槽内の水温が低下することも防ぐことができます。

この換水を1週間程度続ければ、高水温を利用した白点病の治療は完了と言っても良いかと思います。

また、より万全を期すためにには、できればフィルターの清掃も済ませておきましょう!特にウールフィルターは最もゴミを回収する能力があるので、新しいものに交換ですね!

この記事の終わりに

高水温による白点病の治療ですが、実は私自身が初めての経験だったので、事前にアクアリウムショップの店員さんに詳細を伺いました。

その時の答えとしては「白点病の治療は、薬浴を使うことも有りますが、30℃から31℃くらいまで水温を上げて管理することもありますよ。」ということでした。

この答えを聞いて、少し安心を得て、実際に自分の水槽で白点病治療を開始したという経緯があります。

そして、今回の記事で紹介の通り、高水温で管理すること白点病は治療が可能でした。熱帯魚だけではなく、金魚やメダカ等にも有効な手段かと思います。

水草水槽を管理していて薬を使いたくない方や、水槽内の魚の大半に白点病が蔓延してしまった場合には、とても有効な方法かと思います。

魚の白点病治療にお困りの方にとって、少しでも参考になるところがあれば幸いです。