淡水アクアリウムの水草の中で、特に大きな葉を持ち、後景草としても人気なのがエキノドルス属の水草です。
南米大陸のアマゾン川流域が原産の水草となり、最も有名な「アマゾンソード」や特に大きな葉を持つ「エキノドルス・ラジカンス」、そして丸く可愛い葉の人気の改良種である「エキノドルス・キューピーアマゾン」等があります。
日本の水道水という環境の中でも栽培することが可能で、水温さえ20℃以上に保てば、特に気を付けること少なく栽培が可能な水草でもあります。
しかし、そんなエキノドルスも、葉が枯れてくることがあります。完全に株が枯れてしまうわけでは無く、葉が黄色く変色して枯れていきます。
この記事では、エキノドルスの葉が枯れていく現象を観察し、枯れる原因について考察してみましたので紹介させていただきます。
栽培しているエキノドルスと栽培条件
今回紹介するエキノドルスは、金魚水槽の中で栽培しているもので、種類はエキノドルス・ラジカンスとなります。
以前の記事で、エキノドルスの成長速度を測定した株で、詫び草の中に植えられたものとなります。
栽培の環境としては、週に1度の換水で水槽の1/2を変えており、肥料は飼育水の量で決まる液肥を規定量与えています。
また、金魚は丹頂・琉金・ランチュウの飼育中で、LEDライトはGEXのLEDライトを使用しています (点灯時間は1日7時間から10時間) 。
フィルターはGEXの壁掛けフィルターSを利用し、フィルター内には可能な限り濾材を詰めています。
水温は25℃設定で管理しています。金魚水槽ですので、ヒーターは使わなくても飼育は可能ですが、金魚が年中元気に泳いでほしい事と、エキノドルスのためにヒーターを使っているような状況です。
エキノドルスの葉が枯れてきた状態
上記の栽培環境で管理しているエキノドルスですが、葉が突然変色して枯れてきました。
下の写真が葉が枯れてきた実際のエキノドルスの様子です。
最初の写真は上から見た写真ですが、右下の葉が茶色く変色しているのと、中央付近の葉も黄色く変色していることがわかります。
枯れてきた葉を横から見た写真が次の通りです。
完全に葉緑体の緑が無くなり、若干向こう側が透けてしまっているような枯れ方をしています。
エキノドルスは、アヌビアス・ナナの様に葉が厚くは無いため、枯れ始めると一気に色が変色してしまうという特徴もあります。
この葉も「枯れ始めたなぁ」と思ったら、あっという間に枯れ込んでしまいました。
この葉が枯れる前後では、水槽の中の環境については全く変えていません。詫び草の位置を変えたこともありませんし、飼育している魚の数を変更したり、フィルターの清掃なども行っていません。
水温もサーモスタットで制御されたヒーターで、水温計も別途設けている水槽なので、水温が急変したりするようなことは基本的に無かったです。
また、枯れ込んでしまった葉以外は緑色の状態を保っていますし、株の中心付近には下の写真の様に新しい葉が芽吹いてきています (赤色矢印の部分) 。つまり、株自体は枯れていないことになります。
エキノドルスは古い葉から枯れていく
では、エキノドルスの葉が枯れ込んでしまう原因は何故なのでしょうか?
この点を、エキノドルスの成長の仕方から考えていきたいと思います。
エキノドルスの成長について
エキノドルスの成長について、下に模式図を作ってみました。
エキノドルスは、基本的に根元から新しい葉が芽吹いて、葉を次々に展開させていく水草になります。
最も新しい葉が株の中心部から出てくるため、基本的には外側にある葉が古い葉になります。
次の図に示すように、株元を確認していただくと、最も外側に付いている葉が最も古い葉になり、株の中心部に近づくにつれて新しい葉になってきます。
この成長の方法を認識していれば、古い葉と新しい葉の見分けが付くはずです。エキノドルスの葉が増えすぎたと思った時は、最も古い葉を切り落とすようにするので、この点を覚えておくと新しい葉を間違って切ってしまうことは無いかと思います。
エキノドルスの葉が枯れる順番を考える
今回の観察対象にしているエキノドルスについて、これまでの葉の発生の仕方と、上の葉の生え方の法則を参考にして枯れた原因を考えます。
エキノドルスの葉に、古い葉から順に1番から6番の番号を付けると、次の写真に示す様になりました。
つまり、今回枯れてしまった葉は最も古い葉 (1番の葉) で、枯れ始めている葉が次に古い葉 (2番の葉) になっています。
このように、エキノドルスの葉は古い方から順番に枯れてきていることとなり、葉が世代交代をしているように思えます。
葉が何枚出たら世代交代をするのか?という定量的な部分は、栽培条件によっても異なるものだと思います。
今回の例では、枯れた葉がありますが、次に新しい葉が出てきているので、古い葉が役目を終えて枯れ落ちている状態だと考えて間違いは無いかと思います。
今回の事例とは逆に、新しい葉から枯れ始めるようなことがあると、エキノドルスが別の病気に罹っていることを疑った方が良いかもしれませんね。
枯れた葉は早めに切り落とす
枯れた葉については、いつまでも残しておくと水槽の景観が悪くなりますし、放っておくと水槽の中で朽ちて浮遊するゴミの原因になってしまいます。
枯れた葉はなるべく早めに切り落としてあげて良いかと思います。
上の写真で枯れ始めている葉がありますが (2番とラベルした葉) 、このように枯れ始めている葉も切り落として良いかと思います。
切り落とす際は、葉の根元から切り落としてしまいます。葉の途中の部分で切り落としても、残っている部分はいずれ枯れ落ちていくので、下の写真の様に根元部分で切り落とします。
株自体が元気に成長していれば、新しい葉が次々と生えてくるので、1枚や2枚が枯れても特に心配はいらないと思います。
この記事の終わりに
この記事では、淡水アクアリウムの水草で人気の「エキノドルス」について、「葉の世代交代」によって古い葉が枯れ落ちていく現象を、実例を交えて紹介をさせていただきました。
大事に育てている水草の葉が突然枯れてしまうと、誰でも心配になることが多いかと思いますが、植物の葉も古くなったものは役目を終えて枯れ落ちていくということを知っていれば、枯れた原因が自然の摂理なのだと判断することもできるかと思います。
しかし、元気だった水草が全体的に枯れてきたり、新しく生えた葉が急に枯れ落ちてしまう場合などは別の病気や環境の変化を疑うべきかと思います。
熱帯魚の飼育と同じように、水草の栽培も日々の観察が大事だと思わされた経験でした。