熱帯魚や金魚の飼育の中で、最も困ること…それは「魚の病気 (魚病) 」です。
水槽の中で魚同士が多少の喧嘩をしたり、魚が隠れて出て来ない時間が続いても、温かい目で見守ってあげることが出来ますが、魚が病気に罹った場合には見過ごすわけにはいきません。
魚の病気は進行が非常に早く、適切な治療をしなければ、あっという間に命を落としてしまう事が頻繁にあります。
外見で判断できる魚病もあれば、外見に全く現れない状態で進行していく魚病もあり、さらに複数の病気に罹患している場合もあります。
そのため、魚病の治療は、アクアリウムの管理の中で最も難しいお世話であると言えると思います。
一つ言えることは、魚の病気は罹患したことを早期に発見し、直ぐに治療を開始することが鉄則となるといことです。
魚は病気に罹ると、何かしら行動や外見に異変が現れる場合があります。
その異変に気付いてあげられるか否かが、魚病の克服に向けた一つの近道だと思います。
この記事では、筆者の飼育している魚に病気が発症した時、初期症状として現れた変化の実例を紹介したいと思います。
魚病は他のペットに比べ軽視される場合が多い【魚飼育における問題提起】
「ペット」と言う言葉を聞いて、真っ先に思い浮かべる生物は何でしょうか?
容易に想像が付くかと思いますが、猫、犬、小鳥などではないでしょうか?
日本の家庭で飼育されている動物のうち、最も多いのは猫で第2位が犬になります。
そして、このブログで取り上げている「熱帯魚」や「日本の淡水魚」も実はペットの一つに入ります。
少しイメージが湧かないかもしれませんが、ペットと言う言葉は「自らが可愛がって飼育する生物」を指しているので、猫や犬だけでは無く、熱帯魚や金魚・メダカなども全てペットに入ります。
この記事の最初に、このお話を記載したのには理由がありまして…。
一つ問い掛けをさせて下さい。
「魚を飼育されている方は、魚の命をどのくらい大切に扱っておられますか?」
猫や犬を飼育されたことがある方は少しイメージが付くかもしれませんが、ペットとして飼育していた猫や犬が亡くなった時は涙が自然に流れてきませんでしたか?
私も子供の時に飼育していた犬が亡くなった時、自然と涙が溢れ出て来たのを今でも覚えています。そして、動物の霊園に行き、火葬をしてもらった記憶もあります。
しかし、同じく私が子供の時に飼育していた金魚が命を落としてしまった時は、涙が出るどころか、死んでしまった金魚を近くの川に流してしまいました。
同じペットの命であっても、犬か魚かでこれだけ扱いが違うんです。
多分、熱帯魚や金魚を飼育されている方は同じような感情・経験を持っているのではないでしょうか?
犬や猫は私たち人間と同じ哺乳類で、触ったり話しかけたりコミュニケーションを取ることができます。それに対して、魚は住む世界が水中であり、話すことはできませんしコミュニケーションを取ることも難しいです。
そのため、同じペットの命でも、その情の深さの観点で「差」が出来てしまうのは仕方が無いことかもしれません。
しかし、御家庭にお迎えした命は犬も猫も熱帯魚も同じです。
熱帯魚の命も大切にし、熱帯魚が病気に罹った時は治療を行い、普段の管理の中では病気が発症しないような管理をしていただきたいと思いながら、過去に公開した魚病の記事を書いていました。
今回の記事は魚病の重症化を防ぐ第一歩としての「魚病の初期症状」の話を記載します。
飼育している魚の命を守るために重要な飼育管理ポイントになります。もしよろしければ、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
魚病の治療は早期発見・早期治療が最重要!
人間にも動物にも共通したことですが、病気は予防することが最も大切なことです。
人間はインフルエンザなどの病気に罹患しないようにワクチンを打つことができますが、熱帯魚や金魚などは予防薬を与えて飼育するようなことはありません。
白点病予防のために水温を上げておくなどの予防策はありますが、魚のために病気の予防薬やワクチンを投薬することはまずありませんよね…。
そのため、「予防が大切」と一言で言っても、予防をすること自体が難しいのが現実でもあります。
また、もし飼育している魚が病気に罹患したとしても、街には熱帯魚を専門に看てくれる病院がありません。
つまり、飼育している魚の病気は飼育者である我々が治療する以外に方法がないのです。
そのような現実の中で、我々が飼育している魚にしてあげることは、病気の兆候が見られたら直ぐに治療を開始してあげるといことしかありません。
魚の病気は進行が早く、発見が遅れると助けることが出来ない症状になることが多々あります。
私も過去に幾度となく熱帯魚が病気に罹りましたが、助けられた時と助けられなかった時が半々くらいです。
その経験の中で言えることは、病気に罹った魚を救えるか否かは、早期に発見して早期に治療を開始できたか否かに大きく関わっているということです。これは確実に正しい事実です。
アクアリウムを開始した頃は魚病に関する知見・知識が無かったため、病気の進行をただ見ているということしかできませんでした。
しかし、知識を付けて適切な処置を出来るようになってからは、完治の可能性が高くなってきました。
病気の見分け方、そしてその治療については、正直なところ経験を繰り返すしかありません。
以下で紹介する魚病の初期症状の例が、皆様の魚飼育の一つの知見になれば幸いです。
魚病の早期発見に重要な事は日々の観察!それしかない!
魚病の治療は早期発見が最も重要であることを述べさせていただきましたが、魚病を早期に発見するために大切な事は何なのでしょうか?
それは「日々の観察」です。
1日に1回、水槽を5分から10分眺めるだけでOKです。
すると、「飼育している魚が普段どのような行動をしているのか?」「餌はどのくらい食べるのか?」「健康な時の魚体の色や行動パターン」などを知ることができます。
その通常の状態を知っておけば、異常が出た時に直ぐに変化が分かります。
そして、それが魚病の早期発見に繋がると言えます。
熱帯魚や金魚を飼育されている方は、一日にどれくらい魚の事を観察されているでしょうか?
熱帯魚や金魚を飼育し始めた当初は、魚が家にやった来たことが嬉しくて、帰宅後に餌を与えながら15分くらい水槽を眺めている時間があったかもしれません。
しかし、飼育期間が長くなると餌を与えることだけがルーティン作業になり、観察する時間が少なくなることもあるかと思います。
犬や猫の体調の異変に気付くことができるのは、普段の生活の中で触れ合いや餌やり、トイレ掃除 (便の確認) などの毎日のお世話があるからです。
それが出来ない魚の飼育では、「観察」という行為が最も重要になるのは言うまでもありません。
体調不良の魚が見せる行動例と推測される病気
では、実際に魚の体調に異変が起き始めている時に、魚たちが見せる行動の変化について、私の過去の経験からその実例をまとめていきます。
以下で紹介するような魚たちの行動が合った場合、観察頻度を上げて、必要であれば別の水槽に移して治療を開始してあげて下さい。
魚体に傷や鱗の剥がれがある
魚体に傷が鱗の剥がれがあるのは、基本的に何かの病気の弊害による可能性があります。
もちろん、水槽の中の石に体を擦ってしまったり、他の魚から攻撃されて傷がある場合もあります。
しかし、ネオンテトラやラスボラのように、温厚な魚に傷がある場合には注意が必要です。
私の過去の記事でも紹介をしていますが、鱗が剥がれ始めた場合には「穴あき病」が進行している場合があります。
穴あき病は早期に発見して適切な治療方法を取れば確実に直せる病気になります。
過去の記事では、モーリーとラスボラの穴あき病を治療した例を紹介しています。
群れていた魚が単独行動を起こす -水槽の隅で動かない-
ネオンテトラやカージナルテトラ等、小型の熱帯魚たちは仲間同士で集まり水槽の中を群泳することが多いです。
もともと体の小さな魚なので、お互いに団結して子孫を守るという行動本能があります。
しかし、私の飼育経験では、ネオンテトラやカージナルテトラは、病気の兆候がある場合には、群泳をしなくなります。
具体的には、体調不良になった魚は群れから離れて暮らすようになります。
下のリンクにある「ネオンテトラの腹水病」の記事で紹介しているのですが、腹水病に罹患したネオンテトラは、群れを離れて水槽の隅の方でじっとしているようになりました。
自分の体の異変を感じ、仲間に移してはいけないという野生の本能が働いての行動なのかもしれません。上の写真がその時の様子です。水槽の隅でひっそりと暮らすようになりました。
この時は腹水病に罹患していることが分かったのですが、穴あき病を発症したカージナルテトラや白点病が重症化したネオンテトラも同じような行動を取りました。
したがって、通常は群れて泳いでいる魚が、突然単独行動し始めたら、何か異変があると思った方が良さそうです。
また、水槽のレイアウトの陰に隠れて出て来なくなるという行動も病気を持っている場合があります。
過去の記事でラスボラの穴あき病を紹介しましたが、このラスボラは穴あき病が出てから水槽の前面に姿を現さなくなりました。
普段の水槽管理の中で、水槽を観察する時間が無いと、姿が見えない魚がいることに気付くこともできません。
5分でも良いので、毎日水槽を眺める時間が作れれば、このような異変に直ぐに気付くことが出来るのかと思います。
餌を食べていた魚が餌を食べなくなる
私の経験上の話ですが、餌を食べなくなってしまうという症状は、かなり重い病気や体の中での異変があることが多いです。
その証拠として、餌を全く食べなくなった魚は、かなりの確率でお星様になってしまっています。
しかも、表面上は変化が見られずに突然命を落としてしまうパターンが多く、その原因がよく分からないです。
考えられることとしては、内臓に重い病気を持ってしまったことや、体内での病原体・ウイルスの異常増加などです。
餌を食べないパターンの体調不良では、かなりのスピードで症状の悪化が進むことがあり、餌を食べなていないと気付いた数日後には命を落としているパターンもありました。
原因を特定できないため、適切な治療が出来ないことも一因ですが、致死率の高くなる可能性が高い初期症状だと思います。
浮力が強くなり水面に浮かぶ状態
これは金魚によくみられる症状ですが「転覆病」に罹患している場合が多いです。
私の経験上ですが、転覆病や転覆状態になる原因は様々あります。
消化器官の不調による転覆病、餌を食べすぎたことによる転覆病、浮き袋の調子が悪化したことによる転覆病などです。
細菌が関わっている場合もあり、一概に原因を特定することが難しいのも、魚の体が浮かび上がる症状の特徴だと言えます。
基本的には餌を与える量を調整することと、薬浴による治療がメインとなります。
特に金魚には起こりやすい症状なので、以下のリンクで紹介する対処方法・治療方法を御参考にしてみて下さい。
明確な肥満症状が見られ始める
我々人間にも起こる「肥満」ですが、もちろん熱帯魚にも起こり得る症状です。
原因は「餌の与えすぎ」に他なりません。
熱帯魚や金魚は可愛いですし、餌を与えると嬉しそうに食べるので、ついつい過剰な餌を与えてしまう事があるのですが、基本的に餌の与え過ぎは魚の健康に悪影響を与えることが多いです。
肥満の症状が出た時、実は既に腹水病と言う思い病気に罹患していることもあります。実際に、上で紹介した腹水病のネオンテトラは、体が大きく餌の時間にどのネオンテトラよりも多くの餌をたべていました。
また、肥満になったことで体のバランスが崩れて別の病気を併発している場合もあります。
餌は1日2回、朝と晩に与えている方が多いかと思います。
しかし、栄養価の高い人口飼料は、朝1回与えれば十分な栄養が摂取できます。考えてみると、自然界には人口飼料の様な高カロリーな餌にはなかなか出会えませんので…。
つまり、肥満の症状が出てきたら、それは飼育方法のミスによる「人災」と考えるべきかと思います。
初期症状が無く命を落としてしまうことも頻繁にある
ここまで、熱帯魚や金魚の病気について、初期症状として現れる魚の体調や表面上の変化を紹介してきました。
しかし、初期症状もないままに、魚が突然命を落としてしまうケースもあります。
人間にも発症した時点で命を落としてしまう症状・病気がありますよね?(心筋梗塞や脳出血など)
魚にとっても同じで、そのような病気・症状があるのは確かです。
また、年をとった魚は、いつの間にか寿命を全うしていることもあります。
そのような場合には、私達人間には成す術がありません。
残念ですが、自然界に生息する魚にも同じような事は起こるので、その魚はそのような運命だと思い、別れを告げるようにしています。
この記事の終わりに
この記事では、魚が病気に罹った時に、魚の体や行動に現れる初期症状の実例をまとめさせていただきました。
繰り返しになりますが、魚の病気を治すためには早期に病気を発見し、早期に治療を開始することが最優先事項となります。
病気に罹っているのか否かを見極めたり、病気に対する適切な治療を行うためには、それなりの経験や知識が必要になります。
熱帯魚や金魚の命は、他のペットの犬や猫よりも少し軽んじて考えられる場面が多々あります。
しかし、魚も家族に迎えた大切な命でもあります。
病気を防ぐための管理方法、病気の症状・治療方法の知識を身に付けて、1ランク上のアクアリウム管理を進めていきましょう!