金魚の飼育で、多くの方が目にしたことがあるであろう症状があります。
それは、金魚がお腹を上にしてひっくり返った状態になってしまう状態です。
一般的には「転覆状態」と呼ばれることが多いのですが、細菌性の病気である「転覆病」が原因であったり、一時的に浮力調整の機能が低下して転覆状態になる場合もあります。
細菌性の転覆病の場合には、薬浴による治療が必要ですが、そうでない場合には経過観察や飼育環境の改善などで対応が可能な場合もあります。
この記事では、金魚の転覆状態を引き起こす原因として「餌やり」に着目し、餌やりの改善によって転覆状態を防ぐヒントを御紹介できればと思います。
この方法は筆者が実際に行っている方法でありますが、皆様の飼育環境や金魚の個体差によって効果が見られない場合も考えられます。あくまでも御参考のデータであり、実際に金魚の飼育に取り入れる際には、金魚への影響を確認しながら自己責任にて実施をお願い致します。
金魚が転覆状態になった例
まず最初に、私の飼育する金魚が転覆状態になった例を3つ紹介します。
冒頭でも記載しておりますが、どの例も原因は「餌やり」であることが分かっています。
私が飼育した金魚の中で、餌やりの方法が原因で転覆状態になってしまった3匹の金魚となります。
最初の例は、白い体に真っ赤な頭が特徴的な「丹頂」です。
餌を食べて1時間後の様子を下の写真に示しますが、お腹の浮力が強くなった結果、体が横になり水面に浮いてしまっている状態であることがわかります。
この丹頂の場合、転覆状態になったとしても、半日も経たないうちに通常の状態に戻っていました。
次の例は「出目金」です。
下の写真の通り、この出目金も上記の丹頂と同様に体の浮力が強くなり、水面に浮いてしまっている状態です。この出目金は餌やり後に転覆状態になる頻度が高く時間も長くなっていました。餌やりをしてから12時間程度、転覆状態が続いてしまったこともあります。
最後の例は、転覆状態の症状が最も深刻であった「らんちゅう」の例です。
下の写真の通り、完全に体がひっくり返り、正常な泳ぎが全くできない状態になってしまっています。
一見、命を落としてしまった魚の様に見えますが、決して命を落としている状態ではありません。
このらんちゅうの場合も、餌やりから数時間程度で元通りに泳げるようになりましたが、餌を食べると頻度高く転覆状態に陥ってしまっていました。
一時的な転覆状態は食べ過ぎや消化不良が原因の場合が多い
御存じの方も多いかと思いますが、実は金魚には胃袋がありません。
人間は胃袋が満腹になれば追加で食べたくなくなるという「満腹中枢」がありますが、金魚にはその満腹中枢が機能していないのだと思います。
そのため、金魚は餌を与えれば与えただけ食べ続けます。
餌やりを行っても、15分後には再び餌を欲しがる仕草を見せるくらいの大食漢です。
餌を欲しがる金魚の姿を見ると、追加で餌を与えたくなってしまいますが、量を制限しないと「消化不良」や消化不良が原因で別の病気になる可能性も出てきます。
そして、金魚が餌を食べすぎることは、この記事で記載している転覆状態になる原因の一つにもなり得るのです。
お腹の大きな金魚が転覆状態になりやすい
私の飼育経験での話になりますが、餌の食べすぎが原因で転覆状態になる金魚の特徴もわかってきました。
それは「お腹の大きな金魚の方が転覆状態になりやすい」ということです。
「和金」や「コメット」などのスマートな体型をした金魚は、餌を少し食べ過ぎても転覆状態になることがほとんどありません。
しかし、上記の通り、品種改良でお腹が大きくなった「丹頂」「出目金」「らんちゅう」などの品種は、餌の食べ過ぎが原因で明らかに転覆状態になりやすいです。
ですので、お腹が大きな金魚を飼育されている方は、特に餌やりに注意が必要かと思います。
金魚の転覆状態を防ぐ餌やりの改善
では、ここからは金魚の転覆状態を改善するために、実際に私が行った対策をまとめておきます。
まず最初に餌の量を制限する方法、次に餌の種類を変更するという対策を実施しました。
餌を与える量を減らして変化を確認する
まず最初に、金魚が餌を食べすぎることが転覆状態になる原因なのであれば、単純に与える餌の量を減らせば転覆状態が改善するかもしれないと容易に考えられます。
そこで、餌の種類は変更せずに、餌の量を従来の1/2程度で管理してみました。
期間は1週間程度で実験をしたのですが、結果としては餌の量を1/2にするだけでは、あまり効果が無かったです。
しかし、全く餌を与えない日を1日だけ作ったのですが、その時には全く転覆状態になりませんでした。
つまり、餌を食べない状態が続けば転覆状態になる可能性は低いということが言え、餌が影響を与えていることも間違いないのだと考えられるわけです。
ただし、金魚に餌を与えないわけにはいかないので、餌の制限と言うのは今回の解決策にはなりませんでした。
浮力の無い沈下性の餌を使うこと
次に試したのは、餌の種類の変更です。
従来は、ホームセンターで販売されている浮上性の餌 (水面に浮かぶ餌) を使用していました。ホームセンターで安く販売されているものです。
「浮上性」と言うところに目を付けると、餌自体が水面に浮かぶ性質があるので、その餌を食べすぎた金魚はお腹の浮力が増して体がひっくり返ってしまうのではないか…と考えたわけです。
しかし、金魚の餌の多くは水面に浮かう浮上性の餌ばかりで、浮力の無い沈下性の餌を探すのに苦労しました。
インターネットで金魚の沈下性の餌を探していると、下のリンクの商品「メディスーパーゴールド」が見つかったので、さっそく購入して試してみることにしました。
らんちゅう、オランダ獅子頭、丹頂などのお腹が大きな金魚の健康管理フードで、何よりも沈下性の性質を持つ金魚の餌になります。
具体的な使用方法としては、餌槍を朝晩の2回とし、1回あたりの餌の量は従来の1/2から2/3くらいに減らしました。
餌自体が沈んでいくのであれば、金魚の体をひっくり返すような浮力を体内に発生させることは無いだろう…と。
紹介欄には「原料には高い消化効率の材料を使用」とあり、価格も少しだけ高価ですが、試してみる価値はありそうですよね。
そして、実際にこのメディスーパーゴールドを使用してみたのですが、転覆状態になるのを100%防ぐことはできませんでした。
しかしながら、餌やりの度にほぼ転覆状態になっていた金魚が、1週間に1度か2度転覆状態になる程度まで頻度が減りました。
上記の例で紹介した「丹頂」「出目金」「らんちゅう」の全ての金魚に効果があり、転覆状態になる頻度は下がったのが事実です。
特に、最も転覆状態が酷かったらんちゅうは、体がひっくり返るレベルの転覆状態にはなりにくくなりました (少し体が横になる程度で済むことが多かったです) 。
実際にここまで効果が出るのには驚きでした。
その効果は飼育環境 (特に水温や水質) や餌の量に依存するところは大きいと思いますが、目に見えて転覆状態になる頻度と時間が短くなったので、少し安心しました。
餌やりの度に高頻度でひっくり返って泳ぐ状態になると…正直心配でしかないですからねぇ…。
この記事の終わりに
本記事では、金魚がひっくり返ってしまう状態になる「転覆状態」について、その原因の一つは餌やりにあることを紹介させていただきました。
また、その解決策の一つとして、沈下性の餌を使用することも実際の体験とともに記させていただきました。
私の経験ですが、沈下性の餌を使用したことで転覆状態になる頻度は半分以下に減りました。転覆状態を100%防ぐことはできていませんが、頻度が大きく減るだけでも、餌の種類を変えた甲斐はあったかと思います。
ただし、ここで紹介させていただいた方法と結果は、あくまでも筆者の経験であり、皆様の飼育環境に必ず適合するものでもありません。あくまでも一つの例として御参考までに留めていただけましたら幸いです。
しかし、金魚が転覆状態になる頻度が高くお困りの場合には、餌の種類や餌量の変更をお試しになってはいかがでしょうか?