育ったボルビティスは株分けして株数を増やしましょう!

耐陰性の水草として、アヌビアス・ナナと同じように淡水アクアリウムで人気なのが「ボルビティス」の仲間たちです。

強い光が無くても育つ耐陰性の水草であることに加え、透き通るような細長い葉がとても美しく、様々な水槽レイアウトにマッチした水草です。ボルビティスがあるだけで、水槽の中の水景がガラッと変わると言われるくらい素晴らしい水草です。

少し高価な水草ではあるので、手が出しずらい方も多いかもしれませんが、上手に育てると大きく成長して株分けを行うことができるようになります。そうなれば高価なボルビティスを何度も購入する必要もなくなるので経済的ですよね!

この記事では、ボルビティスの中でも最も有名な「ボルビティス・ヒュディロッティ」を例に取り、ボルビティスの株分けのポイントやその方法を詳しく紹介していきたいと思います。


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ボルビティスの成長過程について

ボルビティスは、アフリカ原産のシダ植物になります。アフリカと聞くと少し気温が高い地域で育つように思われますが、適正な水温が25℃前後になるので、熱帯魚の適正水温にマッチしていることも特徴です。

その成長過程は、一般的な園芸の草花とは少し異なり、ランナーと呼ばれる茎を伸ばし、そのランナーから新たな葉や根を展開させるという成長をしていきます。少しイメージが湧きにくいかと思いますので、下の図で成長過程を補足しておきます。

茎が成長していく過程で葉が展開していくという観点では、アヌビアス・ナナの成長と同じようなイメージかと思います。

また、成長速度もアヌビアス・ナナ同様に遅いです。水草の中には1日に1cmくらい伸びるものもありますが、ボルビティスに至っては、種類や成長条件にも依りますが、1カ月単位で変化を見ないと変化が分からないものもあります。

ボルビティスの株分けを行うメリット

葉の密度を下げて病気やコケを防止できる

葉が混雑してしまうことは、植物を育てる上で一般的には「良くないこと」です。

例えば、園芸の植物を例に出すと、葉が混みあっていると雨風を凌げる場所になるため、病害虫が住み着く可能性が高くなるリスクが上がります。また、葉が重なり合って陰になっている場合、光が当たらない葉が生まれます。その葉は光合成が出来ないため、丈夫に育つことが出来ず病気に罹りやすい葉になります。

このような状況は水草にとっても同じで、込み合った葉は株の成長に良くない影響を与えます。

例えば、葉が込み合っており水の流れがさえぎられた場合、水の動きの無い所で育ちやすいコケや藻が繁殖してしまうリスクが上がります。また、葉が込み合った場所では、何か病気が発生したときに隣の葉や茎に移ってしまうリスクもあります。

そのため、大きく成長して葉が混みあってしまうようなボルビティスは、株分けによって葉と葉の距離を適正に保つ (葉の密度を下げる) ことが望まれます。

私の管理している水槽で実際に起きたことですが、同じ水槽内で水流が強い場所で育てていたボルビティスと水流が弱い場所で育てていたボルビティスでは、黒髭苔の発生量が明らかに違いました。もちろん、水流が強い部分では黒髭苔が発生しにくく、水流が弱い部分では黒髭苔の発生が散見されました。

株分けを行うことでボルビティスの株数が増える

株分けを行うことで、ボルビティスの株の数をどんどん増やすことができます。これは本当にメリットだと思います。

冒頭でも述べましたが、ボルビティスは海外から輸入される水草になるため、国内で育てられて販売されるものよりも希少性が上がります。

また、成長が遅いため大量生産もできませんので、日本国内での生産にも限りがありますし、輸入で国内に入っている量も限られています。

そのため、アクアリウムショップでも、カボンバ等の安価な水草に比べて数倍から10倍程度の価格で販売されているのが現実です。珍しい品種のものは、更に高価になるものも多くあります。

しかし、株分けを続けていくことが出来れば、新たにボルビティスを購入せずとも自分の水槽の中で株を増殖させることが出来ますので、ボルビティスを増やすのにコスパ的には最適の方法です。


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ボルビティスを株分けする時の注意点

大きく育ったボルビティスは、茎を切断して株分けをすることになりますが、どんな場合・どんな状態でも株分けをすることができるわけではありません。

株分けを成功させるためには、根がしっかりと発生しているか否かを確認することが重要になります。その点を以下で説明していきます。

下の図に示すように、成長したボルビティスを赤字のAの場所で切断して株分けを行うとします。

ボルビティスの株分け位置

この時、切断部分からの左の株には根が沢山ある状態ですが、右側の成長点に近い部分はまだ根がしっかりと出ていない状況であることが分かります。

そのため、左側の株は株分け後も根が養分をしっかりと吸収してくれますが、右側の株は根が無いために成長に必要な養分を吸収する手段を失います。もちろん、葉からも養分は吸い上げますが、根の方が養分の吸収効率は良いので、最悪の場合には右側の株は弱ってしまう可能性も出てきます。

このような株を株分けする時には、株分けした後に両方の株に根が残るようにしてあげることが重要なポイントです。

そのため、ある程度しっかりと成長したボルビティスの株でないと、根を残すという観点で株分けが難しくなる傾向にあります。小さな株のボルビティスは株分けはせず、まずは大きく成長させることを優先した管理が必要ですね。

実際のボルビティスの株分けを写真入りで説明します

それでは、実際にボルビティスの株分けについて、手順ごとに説明していきたいと思います。

今回の記事で株分けするのは、下の写真のボルビティスです。

この株は、自宅近くのアクアリウムショップで、石に活着した状態で販売されていたものを購入したものです。約半年くらいの管理で、ボリュームが約3倍くらいに増えました。

かなり葉の密度が上がり、少し黒髭苔も出始めてしまったので、株分けによって葉の密度を減らすとともに、株の数を増やすこととしました。

手順①: まず活着している石や流木からボルビティスを外す

ボルビティスは、基本的には何かに活着している状態で育てられているかと思います。例えば、石や流木に糸で巻き付けられているような状態ですね。

その状態では株分けが出来ないので、一度活着している石や流木から外さねばなりません。

活着している状況ですと、根が石に巻き付いていたりしますが、根が切れてしまうことはあまり気にせずに取り外してしまって大丈夫です。根が完全になくなってしまうのはNGですが、根が1cmくらいちぎれても枯れることは無いです。

下の写真が石から取り外した後の写真です。右側に活着していた石が写っています。購入当初は、この石がしっかりと確認できるくらいの小さな株だったのですが、成長によって石が完全に見えなくなるような大きな株に育ってくれました。

手順②: 株分けする位置を確認する

次の手順としては、絡まっているボルビティスを分解していく作業になります。

この時に茎が切れてしまったり葉がちぎれてしまうことがあるので、かなり慎重に行ってあげたほうが良いです。

特に葉はあまり丈夫な植物ではなく、力を入れると簡単に破れてしまうので、あまり力を入れすぎずに処理する必要があります。

絡まった株を分解したら、実際に株分けをする位置を確認します。上で説明したように、株分け後に根が残るようにすることを実践してみて下さい。

手順③: 実際に株分け (茎の切断) を行う

株分けする位置が決まったら、実際にハサミで茎を切り、株分けの作業を進めます。使用するハサミは、出来れば除菌した状態のものを使うことをお勧めします。

株分けを行った後のボルビティスの写真を下に載せますが、複数の株に小さく切断し合計で8株に分けることができました。

この状態になると、処理がかなり楽になるので、腐って変色しているような根や黒髭苔に浸食された葉は切り落とすようにしていきます。

黒髭苔がある葉は、葉の色に透明感が無くなるので、判別が分かりやすいです。下の写真に例を載せますが、右側の葉は透明感があるのに対して、左側の葉は黒く濃い色になっています。この左の葉は、写真ではわかりにくいのですが、黒髭苔が大量についてしまっている葉になります。葉が多く残っている株に関しては、このように黒髭苔が大量に発生してしまっている葉は切り落としても良いかと思います。ただし、葉の数が少ない株は、黒髭苔が発生した葉も光合成を担う大事な葉になるので残しておきましょう。

手順④: 株分けしたボルビティスを再び石や流木に活着する

さて、最終工程です。株分けしたボルビティスを、石や流木に再び活着していきます。

何に活着させるかは、御自身のやり方や好みで決めれば良いと思います。今回の例では、次の写真の通り、全て石に活着させました。

4つに分離されたので、水槽内のレイアウトでも使い方に幅を持たせることができるかと思います。ワンポイントで使用することもできますし、ボルビティスを活着した石を重ねて存在感を出させることもできます。


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作業する上での注意点: 霧吹きで株を湿らせる

ボルビティスの株分けの作業では、注意すべきはボルビティスを乾燥させないということです。

水中で育成した葉は乾燥に弱い状態です。今まで水中で育成してきたのに、急に乾燥した空気中に出されると、株枯れの原因にもなります。

そのため、作業中は常にボルビティスに湿り気を持たせられるように霧吹きで水分を供給しながら行いましょう。

特に夏の暑い時期や冬の乾燥した時期は注意が必要です。

この記事の終わりに

この記事では、耐陰性の水草として淡水アクアリウムで人気のボルビティスの株分け作業を御紹介させていただきました。

成長速度が遅く希少性も高い水草のため、効果で売買されている品種になりますので、株分けを行って増やせられたらコスパ的には嬉しい限りです。

アクアリウムショップで購入した後、約半年から1年くらい育てたボルビティスは、株分けを行えるくらいのサイズには成長しますので、皆様も株分けにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

根を残すように株分けすることと、株分け作業中に乾燥させないことを注意すれば簡単にできる作業かと思います。

私としては、今回株分けしたボルビティスをさらに増やして、水槽の中にボルビティスの森を作るのが今後の一つの目標です!