ベタは長いヒレと鮮やかな色、そして簡単な水槽で飼育ができることから、アクアリウムを趣味にしている人以外にも人気の熱帯魚です。
ラビリンス器官と呼ばれる特殊な呼吸器官を持つため、フィルターやエアレーション (ブクブク) が無くても飼育が可能な事から「ワイングラスでも飼育できる熱帯魚」ということでも有名です。
しかしその反面、雄の気性の荒さから、雄は単独での飼育が前提だと言われています。
しかし、その美しい魚体は、複数飼育して泳がせたいという方も多いのではないでしょうか?
私自身、その望みをかなえるために、様々な試行錯誤をしてトップ画像に示すように、ベタのオスとメスの常時混泳に成功したので、その経験を記事にしておきたいと思います。
ベタのオスは別名「闘魚」と呼ばれオス同士の混泳は不可能
ベタを始めて知る方は御存じないかもしれませんが、ベタは別名で「闘魚 (とうぎょ)」と呼ばれます。
これは、ベタのオス同士は縄張り争いやメスの奪い合い、そして自分の力を召せ付けるように、どちらかが命を落とすまで闘うくらいの闘争心のある熱帯魚であることに由来します。
ベタの原産地である東南アジアでは、その昔、闘牛と同じようにベタとベタを戦わせて、より強く美しいベタを持つことが一つのステータスだったと聞きました。
それだけ闘争心の高い魚であるが故に、ベタのオス同士を混泳させることは不可能だと言われます。
例え、60cm以上の大きな水槽に2匹を混泳させても、相手を見つけた瞬間に近づいて行って威嚇と噛みつき合う喧嘩を始めてしまいます。
ベタのメス同士は混泳が可能
ベタのオス同士は混泳が確実に無理ではあるのですが、実はメス同士は混泳させても大きな問題になりません。
ベタのメスも口を大きく開けて鰓を張って威嚇行動をするのですが、噛みつき合ったりして、お互いに傷つけあうことがごく稀です。
そのため、アクアリウムショップでもメス同士を同じ水槽で陳列している所も多くあります。
ただ、メス同士でも体格のさや気性の荒さに個体差があるので、心配な方は様子を見ながらの混泳が良いかと思います。
ベタのオスはメスにも攻撃を仕掛ける
では、ベタのオスとメスはどうか?と言う点ですが、オスとメスなら大丈夫だろうと思うのですが、実はオスはメスにも襲い掛かります。
オスは気に入ったメスとしか繁殖活動をしないため、気に入らない相手が来ると、オス同士で威嚇するように鰓を張ってメスを追い払います。
時にはメスを噛んでヒレや体をボロボロにしてしまうこともあるので、オスとメス同士でも混泳は考えさせられることが多々あります。
一般的に考えると、オスはメスを大事にして、メスの周りを雄が囲い込むようになるのですが、ベタの場合はその一般的な常識が通用しません。
そのため、繁殖を狙ってオスとメスを混泳させても、失敗してしまう確率の方が大きいです…。ベタのオスとメスは混泳させる前にお見合いをさせて相性を確認し合うということが一般的なのは、そのような特徴があるからです。
ベタのオスとメスを混泳させるのに必要な条件
ベタのオスとメスも混泳させることが難しいと書きましたが、私のベタ飼育の経験の中で、混泳が可能な条件と言うのがわかってきました。
もちろん、理想的には混泳させないことが良いのかと思いますが、とても綺麗なベタの魚体に魅せられて、複数匹混泳させたいという願いがあり試行錯誤しました。
以下で、私が実施しているオスとメスの混泳に必要だと思う条件を紹介したいと思います。条件として、ベタのオスを1匹とメスを1匹または2匹混泳させるような水槽を仮定しています。
条件① 水槽は60cm水槽が必要
まず、条件の一つ目としては、大きな水槽が必要です。
最適な水槽は60cm水槽ですね。ベタを飼育するのにわざわざ90cmの大きな水槽は用意できないかと思いますので、一般的な60cm水槽で十分です。
なぜ、60cmの水槽が欲しいかと言うと、オスとメスの距離を保つことができ、もしもメスがオスに威嚇されたときに逃げる十分なスペースを確保できるからです。
60cmくらいあると、ベタはある程度自由に泳ぎ回れるので、もし結果が起きても逃げ場所を確保してあげることができます。
また、水槽の中には水草を入れてあげるとベタが安心しますね。ベタって、水面に浮かんでいることが多いのですが、実は水草の中に体を突っ込んで餌を探したり隠れたりするのが好きです。それが原因でヒレがボロボロになってしまうこともあるのですが…。
条件② オスはハーフムーンなどのヒレが大きな種類を選ぶ
次の条件はオスの品種に対する条件です。
ベタはヒレが大きい品種は泳ぎが苦手です。そのため、水槽の中でも水流がほとんどないような場所でじっとしていることが多いです。
特にヒレが大きなハーフムーンやフルムーンは泳ぎがとても苦手です。
そのため、水槽内を俊敏に泳ぐことができず、ゆっくりと移動することがほとんどです。
それに対してメスはオスよりもヒレが小さいため、泳ぎがハーフムーンやフルムーンのオスよりも得意です。
つまり、メスはオスに襲われる前に逃げることができ、距離を十分に保つことができます。
実際に、下の写真に示すように、私の水槽ではこれだけ近い所にオスとメスが近寄っても何の不具合も起きていません。これはちょうど餌を与える時間で、お互いによって来たところです。また、この2匹は夫婦になっているペアではありません。
オスも自分が泳ぎが下手なことを知っており、ベタのメスが逃げると無理に追っかけるようなことがほとんど見られません。
60cm水槽で、ヒレの大きなオスとヒレの小さなメスと言うのが混泳のベストマッチ条件だと考えます。
クラウンテールやプラカットのオスは、水槽が大きくてもメスとの混泳は避けた方が良いと思いますね。クラウンテールもプラカットも意外と泳ぎが上手です。
条件③ 水槽に少しだけ水流を作る
これは必須の条件下は判断に迷うところもありますが、水槽内に少しだけ水流をつけてあげると、オスが水流を嫌うのでオスの行動が若干制限されます。
オスの行動を制限することは、あまり良いことではないかもしれないのですが、60cm水槽で飼育しているので、店頭で見る10cm角の水槽よりは断然マシです。
オスとメスを混泳させる条件として、水流は若干の効果があるかと思います。雌は水流に逆らって泳ぎますが、オスは水流に近づこうとしませんので。
オスはメスを威嚇し続けます
上記の例では、オスとメスが傷つけあうようなことは無いのですが、オスがメスに対する威嚇を止めることはありません。
繁殖期になれば、また状況も変わるかもしれませんが、メスがオスに近づくとオスは威嚇を始めます。
せっかくメスが近づいて行ってくれているのに、何故威嚇をするのか…ベタのオスの心はわかりませんね(笑)
個体の性格にも依存することは忘れてはいけない
今回紹介した私の水槽ですが、オスとメスの常時混泳が実現できているのは、オスの性格に依存するところがあるのかもしれません。
熱帯魚にも個性があるので、闘争心の強いベタもいれば少しおとなしいベタもいます。
そのため、上で紹介した条件を整えても、オスとメスの混泳が実現できない可能性があることもご理解いただければと思います。
オスの気が変わって繁殖活動をすることもある
これは私も期待をしている所なのですが、ベタのオスはかなり気分屋なところがあり、オスは昨日まで威嚇していたメスを妻に迎えることがあります。
逆に、産卵をしたペアであったはずのベタのオスとメスが、次の日にはペアが解消されてしまっていることもあるのです。
そのため、ベタのオスとメスはいつ繁殖活動をするかわかりません。混泳させていると、いつの間にかペアになっていることがあり、個人的にはそうならないかと期待をしながら、混泳での飼育を続けています。
この記事の終わりに
この記事では、ベタのオスとメスの混泳を実現させた方法を紹介させていただきました。
広い水槽で泳ぎの苦手なオスであれば、メスとの混泳は可能だと思います。しかし、生き物なので「絶対」ということは言い切れません。
ベタは非常に美しい熱帯魚なので、複数匹を混泳させてみたいと思う方も多いかと思います。そう思われる方にとって、御参考になる記事となりましたら幸いです。