優雅な姿で水槽の中を泳ぐベタですが、ヒレがボロボロになってしまうことがあります。
アクアリウムでは、小さな容器に個別で飼育されており、お互いに傷つけあうことを防いでいるのですが…御自宅で水槽の中で単独飼育している場合でもヒレがボロボロになってしまうことがあります。
それって、何故なんでしょうか?
この記事では、ベタのヒレが傷ついてしまう、ボロボロになってしまう原因について私の経験から記載させていただきたいと思います。
改良ベタのヒレは傷つきやすい
優雅な大きく長いヒレを持つベタは基本的に「改良ベタ」と呼ばれています。
ベタの原種は東南アジアに生息しているヒレが短く、いわゆるワイルドベタと呼ばれるような姿の魚です。
ベタは1900年代前半から飼育用の魚として広く親しまれてきたのですが、突然変異や品種改良によってヒレの大きさや色が改良されていきました。今では品評会が開催されるほど、希少性の高い美しいベタも存在しており、アクアリウムで一つの人気ジャンルになります。
ハーフムーン、フルムーン、クラウンテールなど、多くの品種があるベタですが、これらは全て「改良ベタ」となります。これらのベタはヒレが長く改良されており、正直なところ自然の中で生き抜くために身に付いた体型・能力では無く、人が作り出した芸術作品という表現の方が似合っているように思います。そのため、ヒレは弱い部分が多く、ちょっとした厳しい条件でも傷ついてしまうのです。
原種に近いベタたちは、ヒレが小さく比較的丈夫なのでヒレが大きく傷つくことはほとんどありません。とてもスマートな体型をしているので、水草や木々の中を通り抜けていく能力も高いものがあります。
ベタのヒレが傷つく原因について
原因① レイアウト水槽で飼育している
近年の淡水アクアリウム (熱帯魚の飼育) は、水槽の中に水草や流木を入れた「レイアウト水槽」が最も人気のあるジャンルです。
そのようなレイアウト水槽の中でベタを飼育すると、ヒレが傷つきやすいです。
ベタはおっとりした性格で、水面付近に浮いているようなイメージがある方が多いと思いと思います。しかし、原種のベタが持つ本能は結構アクティブに水中を動き回ります。
そのため、長く大きなヒレを持つベタ達も、流木や水草の中を泳ぎ回るという本能を持っています。
ベタをレイアウト水槽で飼育されている方なら見たことがあるかと思いますが、流木の下や水草の中に体を突っ込んでいきます。そのため、流木に体が擦れればヒレが水尽きますし、ヒレが割れてしまう原因にもなります。
アクアリウムショップで何もレイアウト素材が入っていないベアタンクに近いもので飼育されているのは、レイアウトとの摩擦によるヒレの傷を防ぐためでもあるのです。
下の写真は私の飼育しているハーフムーンのベタですが、レイアウトの水草の中に潜り込んでいくのが大好きで、長く美しいヒレが今では少しボロボロになってしまっています。ベタからしたら美しいという問題よりも、好きなところに入り込んでいきたいという本能の方が強いんだと思います。悩ましい所で張りますが、好きなように泳いでもらってストレスを感じないのであれば、それで良いかと割り切っています。
原因② 他の魚と混泳させている
長いヒレを持つベタは、泳ぎが上手ではありません。
そのため、攻撃性の高いベタですが、長いヒレが原因で他の魚を攻撃する能力が無いと言えます。
ですので、プラティやメダカ等と混泳を楽しんでいる方も多いかと思います。
しかしながら、ベタと混泳させる魚は気を遣わねばなりません。その根本になるのが上でも記載した「泳ぎが下手」な事です。
プラティやモーリーなどの食欲旺盛な魚は常に食べ物を求めており、ベタのヒレもつつき始めるようになります。また、エンゼルフィッシュなどもベタのヒレを食べてしまう魚です。
ベタが攻撃をしてこない、泳ぎが下手であることがわかると、それらの魚はベタのヒレを餌だと思い込み食べ始めます。こうなると、一晩にしてヒレの大部分が傷つき無くなってしまうことも起こります。
実際、私がまだ知識不足だった時、プラティとハーフムーンベタを混泳させ、1週間後にプラティがベタのヒレをつつき始め、ヒレをボロボロにされました…。
ですので、改良ベタのヒレを守りたい場合には、混泳相手は必ず事前調査しておくことをお勧めします。
原因③ 水流が強い
原種のベタは東南アジアの川に生息しているので、泳ぎ自体は下手な方ではないです。
しかし、ヒレが大きく改良されたベタ達は、上で書いたように泳ぎが超下手です。
水流があると容易に流されていきます。ヒレの大きさが大きいので、水流を受ける面積も大きく流されやすいんですね。また、ヒレを上手に動かせないので、泳ぐときに邪魔になってしまいます。
そのため、水流が速い水槽で飼育すると、必死にヒレを動かして泳ぐことになるので、その激しい動きにヒレの耐久性が持たず、ヒレが破れてしまいます。
外部フィルターから戻ってくる水の水流はベタには強すぎます。水流を弱くするように工夫してあげましょう。例えば、エーハイムの外部フィルターであれば、下の写真の様なナチュラルフローパイプなどが用意されていますね。
原因④ ベタが驚くことをしている
改良ベタのヒレが弱いことは上で記載した通りで、激しい動きでもヒレが傷つくことも紹介させていただきました。
それに関係して、ベタがヒレを激しく動かしてしまうようなことを防ぐ必要があります。
具体的には、ベタが何かに驚いて水槽内を勢いよく逃げ惑うような状況はヒレを傷つける一つの原因になります。
水槽の前に急に人が現れる、ライトが急に明るくなる、大きな物音を立てる、といような魚を驚かしてしまう行為はなるべく起こらないようにしてあげましょう。
ベタは物音には驚かない性格の持ち主ではありますが、個体差がありますし、絶対に驚かないという保証もありません。普段の飼育において少し気を遣えば防げることですので、私も普段から気を付けている点でもあります。
ヒレが傷つきにくい改良ベタ
基本的にヒレが長く大きいものは、上で説明した通り、ヒレが傷つきやすいことは確かです。
そのため、ヒレが傷つくことを「ちょっと嫌だな」と思う方は、プラカットやトラディショナルベタという改良ベタの品種を選んだ方が無難です。
プラカットはヒレが小さく、ベタの中でも比較的泳ぎの得意な品種です。レイアウト水槽の中で飼育しても、そのスマートな体つきで、レイアウトの中をすいすい泳いでくれます。
また、クラウンテールと呼ばれる改良ベタは、もともとヒレが割かれている品種ですので、ヒレがダメージを受けにくいという特徴があります。ヒレはボロボロにならないけれど、ヒレが切れてしまうという懸念はありますが…。
ベタは水流の弱いベアタンクが最適
ヒレが大きく長い改良ベタの飼育は、基本的には水流が弱くレイアウト素材の少ない水槽が最適です。
これはアクアリウムショップでのベタ販売コーナーを見てもわかる通り、レイアウト水槽で売られているベタは僅かだと思います。販売のプロの皆様も、改良ベタのヒレの保護には気を遣うので、初めてベタを飼育される方やベタのヒレを傷つけてしまった方は、それに倣って飼育水槽を作っていくべきですね。
また、ベタがフィルターも付いていない水槽で飼育されている姿を見ますが、水質の安定という観点ではフィルターは絶対に使って欲しいと思います。
本記事の終わりに
この記事では、改良ベタのヒレが傷ついてしまう原因について、私の経験から対策すべき点を御紹介させていただきました。
改良ベタはヒレが長く大きく、そしてカラフルな色を持っているため、それを長く美しく維持したいというのは飼育者の願望だと思います。
しかし、その美しいヒレを保つためには、一般的な熱帯魚以上に飼育水槽のレイアウトや設備を考えてあげる必要があり、飼育者の技術が問われる部分でもあるかと思います。
いつまでも美しいベタでいてもらえるように、ベタのことを第一に考えた水槽を立ち上げていきたいものです。