淡水水槽のレイアウトとして導入する水草の中で、最もポピュラーで誰でも安心して育成が可能な品種の一つが「アヌビアス」の仲間です。
サトイモ科の植物で、水中でも水上でも育てることが出来るため、アクアリウムだけでは無くパルダリウムなどにも取り入れられる、とても万能な植物と言えます。
また、アヌビアスは熱帯魚が飼育できる環境を整えれば枯れることはほとんど無く、株分けを行うことで株数を増やすことも容易にできるため、アクアリウムの楽しみの幅を広げてくれる水草でもあります。
そんな優秀なアヌビアスですが、成長速度がとても遅いという特徴があり、この特徴が原因で葉にコケが発生しやすいというデメリットがあります。アヌビアスの唯一のデメリットと言えるのかと思います。
とても綺麗な水草なのですが、一度コケが生え始めてしまうと除去することが難しく、対処に困ってしまうというのが現実です。
この記事では、アヌビアスに発生しやすい茶ゴケの除去方法として木酢液を用いた方法を紹介させていただきます。
木酢液は臭いがきつい液体ですが、アヌビアスの苔を確実に除去してくれますので、お勧めのコケ除去方法です。
アヌビアスは水槽用ライトが弱くても茶ゴケは発生する
アヌビアスは耐陰性がある水草のため、あまり強い強度のLEDライトを使用されていない方も多いのかと思います。
今回紹介するアヌビアス・ナナは45cm水槽 (金魚水槽) で栽培しているものですが、25cm水槽用の小さなLEDライトで育てているものとなります。
管理方法としては、LED点灯時間が1日に4時間程度と短かく、液肥もほぼ与えていません。
しかし、それでもアヌビアスの葉の表面に「茶ゴケ」が発生してしまいます。
金魚の糞が窒素源 (肥料) となり、室内の蛍光灯程度の明るさがあれば、アヌビアスの葉の表面に茶ゴケが成長する条件が揃ってしまう様です。
強いライトが好きな黒髭苔やアオミドロが成長しない環境であっても、茶ゴケにとっては十分成長できてしまう環境なのだと思われます。したがって、アヌビアスの栽培には茶ゴケの発生は付き物だと言っても過言ではないのかと…。
もちろん、アヌビアスへの茶ゴケの発生を抑制できている水槽を見たことがありますが、個人的にはそれは少数派かと思います。
そのため、アヌビアスに発生する茶ゴケに関しては、定期的な除去を行うという対応が必要なのだと思います。
また、アヌビアスを水槽で栽培する場合には、定期的なメンテナンスを行うことを前提とした下準備も必要です。例えば、水槽からいつでも取り出せるように、小さな石や流木に活着させるという栽培方法が好ましいと言えますね。
本記事で茶ゴケを除去するアヌビアスの紹介
今回の記事で茶ゴケを除去するアヌビアスですが、以下の2種類を用意しました。両方とも金魚の水槽で育成しているアヌビアスになります。
一つ目は、アヌビアスの中でも最も有名な「アヌビアス・ナナ」です。アクアリウムショップに行けば、必ず入手が出来るくらい流通量が多い最も人気のアヌビアスです。(下の写真参照)
葉の表面を見ての通りですが、茶ゴケがかなり発生しており、葉の美しさが損なわれてしまっている状況であることは分かるかと思います。
もう一つのアヌビアスは、「アヌビアス・ナナ・プチ・ゴールデン」です。アヌビアス・ナナに比べて葉のサイズが小さく (プチの由来) 、葉の色が黄色みがかっている (ゴールデンの由来) アヌビアスになります。
こちらのアヌビアス・ナナ・プチ・ゴールデンも葉の表面に茶色い模様が出来ていることがわかりますが、これらが全て茶ゴケになります。
今回はこの2種類のアヌビアスについて、茶ゴケ除去の実例を紹介したいと思います。
茶ゴケの除去には木酢液が有効
茶ゴケを枯らせるのに使える液体が「木酢液」です。
木酢液は木炭を製造する際に発生する煙を冷却することで得られる酸性の液体ですが、この酸性という特性がコケを枯らせるのに有効な特徴となります。
木酢液は園芸用などにも販売されている液体になりますので、ホームセンターでも販売されています。価格も安価で2Lで数百円です。
アクアリウムで木酢液を使用する場合には注意点もありますので、以下に記しておきます。
木酢液は商品ごとに品質が異なるので使用方法に注意
木酢液は上記の通り、木炭の製造過程で得られる液体ですが、使用する木炭の原料 (木の種類) や製造温度などで品質にばらつきがあります。
基本的に製造元が違えば、木酢液の品質・濃度が違うと思っていた方が良いです。
また、生成された木酢液の原液を販売している場合も有りますし、濃度を薄めて販売している場合もあります。
定量的な濃度が明記されていれば品質の差が分かりやすいのですが、木酢液の場合には成分・濃度が記載されていない場合がほとんどなので、いつも使う木酢液を決めて、どのくらいの濃度に希釈すれば良いかを把握しておくことをお勧めします。
基本的に、まずは木酢液を水で希釈したものから使用して、徐々に濃度を上げていくような形で実験をすることが必要かと思います。
次項で紹介する「Zenith Water」はアクアリウム用に販売されている製品になりますが、この商品を使用してアヌビアス・ナナが枯れてしまったり葉焼けを起こすことはありませんでした。
アクアリウム用のZenith Waterはお勧め
今回の記事で使用する木酢液は「Zenith Water」という製品になります。
スプレー式で木酢液を吹き付けることが出来るので、アヌビアスの葉に効率的に木酢液を吹きかけることができます。
もちろん、ホームセンターで購入した木酢液を容器内で希釈して、そこにアヌビアスを浸すという方法でも問題はありません。
【注意!】木酢液で葉が枯れる水草もある
木酢液はコケを枯らせる能力があるということは、水草にも悪影響が出ることもあります。
私の経験では、ルドヴィジアとロタラは木酢液によって葉が枯れた経験があります。
そのため、大事な水草に木酢液を使用する際には、濃度が薄いものから使用することをお勧めします。
また、水草の一部分に使用して、葉に悪影響が無いことを確認してから全体に木酢液を吹きかける等の使用方法を行ってください。
実際に行った木酢液による茶ゴケ除去の手順
さて、実際に木酢液を使用して茶ゴケの除去を行う手順になります。
① まず最初に茶ゴケを除去したいアヌビアスを水槽から取り出します。
② 次に木酢液をアヌビアスに吹き付けます。または、木酢液の入った容器にアヌビアスを漬け込みます。木酢液は臭いがとても強烈なので、可能な限り屋外で処理しましょう!
③ 木酢液の濃度にも依りますが、Zenith Waterを使用する場合には、吹き付けてから1分程度放置しておきます。苔の発生具合やコケの厚さによっても処理時間は変わるので、茶ゴケが取れないようであれば追加処理も検討します。
④ その後、水道水で木酢液を洗い流し、アヌビアスを水槽に戻します。
以上が一連の作業内容になります。
では、実際にアヌビアスに発生していた茶ゴケが除去できたのか否かを見ていきます!
木酢液で処理した後の茶ゴケの変化
木酢液を茶ゴケに吹きかけた結果として、アヌビアスの葉の表面がどう変化したかを紹介します。
まず最初にアヌビアス・ナナに発生していた茶ゴケの除去についてです。
次の写真で、上の写真が木酢液を吹きかける前のもの、下の写真が木酢液を吹きかけて水槽に戻してから24時間後の状態になります。見やすいように上から見た写真を選んでみました。
木酢液を掛けてから完全に茶ゴケが枯れ落ちるまでには時間がかかるので、少なくとも24時間くらいは待ってみて下さい。すると、上の写真の様に茶ゴケがかなり綺麗に除去できます。
まだ、少し茶ゴケが残ってしまっているところがありますが、その部分は木酢液の処理時間が足りなかったところになります。追加で木酢液処理をすれば茶ゴケの除去は可能です。
次にアヌビアス・ナナ・プチ・ゴールデンの結果になります。
アヌビアス・ナナ・プチ・ゴールデンの方は、かなり綺麗に茶ゴケが除去できていますね。上記のアヌビアス・ナナと木酢液の処理時間は同じでしたので、アヌビアス・ナナに比べて、葉に発生した茶ゴケの厚さが薄かったのだと思います。
この記事の終わりに
本記事では、アヌビアスの葉に発生した茶ゴケを木酢液で除去した実例を紹介させていただきました。
水槽でアヌビアスを育てている方の多くが、アヌビアスの葉に発生する藻やコケに悩まされることかと思います。
発生したコケをブラシや手で擦ろうとすると、アヌビアスの葉が破れてしまう可能性がかなり高いので、お勧めできません。
しかし、ホームセンターで入手できる木酢液を使用することで、藻やコケは綺麗に除去することができます。
使用条件は自ら最適な濃度や時間を試していく必要はありますが、その処理方法を見つけるのもアクアリウムの楽しみかと思いますので、皆さんも木酢液で苔の対策をしてみてはいかがでしょうか?
ただし、木酢液に弱い水草も有りますので、少量の水草で実験する等の事前検討はお忘れなく!