熱帯魚の魅力は、何と言ってもその美しい体の模様や色です。
もちろん、魚体の形やヒレの長さなども美しさの指標になるかもしれませんが、最初に目に入る美しさとしては、体の模様や色の方が強い印象があるかと思います。
そんな熱帯魚の色や模様ですが、水槽で飼育する際に同一種を多く混泳させた方が綺麗になるというのを御存じですか?
水槽の中で様々な種類を飼育したいという希望から、同一種の熱帯魚を1匹ずつ飼育しているようなことはありませんか。実は、その飼育方法は熱帯魚を美しくするのにマイナスな要素になっている可能性があります。
この記事では、同一種の熱帯魚を1匹だけ飼育すると美しさが損なわれてしまうという事実を実例と共に紹介したいと思います。
同一種の熱帯魚を複数混泳させるメリット
水槽内で同一種類の熱帯魚を複数匹飼育する際のメリットとは何でしょうか?
「水槽が賑やかになる」という当たり前の理由は置いておいて、熱帯魚の特徴や性格上でのメリットをお話したいと思います。
群泳することで隠れてしまうことを防げる
まず一つ目のメリットは、群泳することで魚が安心して水槽内で過ごせるため、魚が物陰に隠れてしまうことを防ぐことができるということです。
特に小型のカラシン科の魚やラスボラなどに言えることですが、自然の中では常に同一種で群泳して生活しています。そのような状態を水槽内に実現してあげることが望ましいのは言うまでもありません。
複数種の熱帯魚を混泳させる場合も、例えばネオンテトラ10匹とラスボラ10匹など、同じ種類の熱帯魚を複数泳がせることで、水槽内でのストレスを軽減する効果があります。
そのストレス軽減が、熱帯魚が物陰に隠れてしまうということを防ぐことに繋がると言えます。
隠れている魚を水槽の前面に出すヒントは、下のリンクにまとめております。何か御参考になれば幸いです。
熱帯魚本来の美しい色が現れる
皆さんは、魚の色や模様が何のためにあるか御存じですか?
一般的に言われている役割は、仲間を認識するためやコミュニケーションツールの一つであるということです。
つまり、魚たちは自分の仲間に自分の存在を知らせる意図もあり、体の表面に色や模様を持っています。色や模様を出すことで、自分が仲間の群れに入ったり、求愛行動を行うことができるのです。
そのため、熱帯魚にとっては色を綺麗に出すことは種を存続するためにも必要なことなのだと言えるのかと思います。
一つの例を紹介したいと思います。
例えば、下の写真のカージナルテトラですが、アクアリウムショップでは多くの数を一つの水槽で飼育されています。
カージナルテトラの体色は、LEDライトの助けもあり、とても美しい青色と赤色に輝いて見えますよね。
この輝く色は、カージナルテトラ同士がお互いに存在を知らせ合い、コミュニケーションを取る意味もあるのです。
また、アクアリウムでよく言われるのが「飼い込む」ことで色がしっかりと出るということ。水槽の環境に慣れ、周りの同種の魚と共同生活を送るようになったことで、魚本来の色が出てくることになります。
美しい色を出すには、同種の魚を複数混泳させることも必要だと感じることが多々あります。
さらに個人的に思うのは、特に同種のオスを混泳させておくことで、大きさや色を競い合うように発生させる場合があります。その例として、この記事の下のパートではニューギニアレインボーの例も挙げております。
同一種を1匹だけ飼育すると色が悪くなる?
実は、1種類の熱帯魚を1, 2匹で飼育すると、その魚の色が落ちる傾向にあることを御存じでしょうか?
私も熱帯魚の飼育を長く続けてきて気付いたことです。
その理由について、私の考えていることを記載していきたいと思います。実例については、一つ下の見出しで紹介していきます。
仲間がいない事がストレスになる
上でも記載しましたが、小型の熱帯魚は複数匹が群れで泳ぐことで、外敵から身を守りながら生活をしています。
熱帯魚を飼育されている方であれば、必ず見たことはあるかと思いますが、複数種の魚を混泳させた時、必ず同じ種類の魚で群れを作ろうとする傾向にあります。
例えば、ネオンテトラ10匹とラスボラ10匹を混泳させると、高い確率でネオンテトラの群れとラスボラの群れに分かれます。
群泳するという本能があるため、逆に周りに仲間がいない場合には、それがストレスになります。
そして、本来発色するはずの綺麗な色がなかなか出て来ないという状態になるのかと考えられます。
仲間がいなければ発色する必要が無くなる
周囲に仲間がいない環境であることを想定すると、仲間とコミュニケーションを取る必要が無くなります。
つまり、コミュニケーションツールや仲間認識のための体の色や模様が役割をなさないということになります。
また、周りに繁殖相手がいなければ、婚姻色を出す必要もなくなるので、繁殖期に色が美しくなる魚も色が出てにくくなることが推測されます。
人間も同じですよね…使っていない能力はいつの間にか忘れるものです。英語を勉強しても、英語を使う環境に無ければ、その能力は体から退化していきます。
魚に取っても同じことが言えるのではないかと思います。下で紹介する例を見ると、本当に色や形などの美しさが損なわれることが分かります。
色が落ちたネオンテトラの例
複数種の熱帯魚が泳ぐ水槽で、ネオンテトラを1匹だけ飼育した場合の例を紹介します。
30cm水槽の中で、ラスボラやランプアイを複数飼育しており、その中に別の水槽で飼育していたネオンテトラを1匹だけ導入した時の事です。
上の写真は導入当初の様子、下の写真は導入から1ヵ月経過した時の写真になります。
特に写真の加工はしておらず、スマホの写真で撮影した状態のままのものです。
使用しているライトも同じで、概ね同じ角度で撮影できるようにしましたが、違いが分かるでしょうか?
与えている餌の種類も量も同じ条件で飼育していましたが、発色具合に大きな変化が現れています。
現物を見ると確実に違いが分かるのですが、体の輝きが全体に損なわれており、つやが無くなっているような印象を受けます。また、赤色の部分は色が少し黒みを帯びていることも分かりますし、青色の部分も発色が悪くなっています。
上の写真の時は、60cm水槽で10匹程度のネオンテトラを混泳させていただので、発色がとても良い状況でした。しかし、1匹だけで育てると、目視で分かるレベルで色が落ちていくことを確認できました。
ヒレが短くなり色が落ちたニューギニアレインボーの例
次の例は、ニューギニアレインボーの例になります。
60cm水槽でニューギニアレインボーを3匹飼育していたのですが、3匹で泳いでいる時には、ヒレも長く体の発色も非常に良い状態でした。
しかし、1匹が水槽から飛び出してしまいお星様に…もう1匹が原因不明の状態でお星様になりました。その結果、1匹だけが60cm水槽に残ったのですが、体の美しさが大幅に下がりました。
実際の写真で見ていただきたいと思います。
上の写真がニューギニアレインボーが3匹泳いでいた時の様子、そして下の写真が同じニューギニアレインボーが1匹だけになった後の様子です。
明らかに異なるのは、体の縦縞模様がかなり薄れていき、尾ヒレの蛍光色がかなり弱くなりました。
また、背ヒレの長さやヒレの形自体も美しさが損なわれています。
さらに、ニューギニアレインボーが複数で泳いでいた時には、フィンスプレッディングと言って、ヒレを広げる仕草を頻繁にしていたのですが、1匹になった後はヒレを広げることは全く無くなりました。
複数で泳いでいる時には、お互いに強さや美しさを競い合ったり、お互いにコミュニケーションを取るためにフィンスプレッディングを行っていましたが、1匹になるとその必要が無いのだと思います。
ニューギニアレインボーは、ヒレを広げることで美しさが際立つ魚でもあるので、今の状態ではかなり見応えが無くなってしまいました。
これも、同一品種の熱帯魚を複数飼育したほうが良いことを表す一例だと思います。
この記事の終わりに
この記事では、熱帯魚の発色や模様を美しく出すためには、同一品種の魚を複数匹混泳させることが好ましいことを紹介させていただきました。
また、水槽内に仲間の魚が泳いでいない場合に、熱帯魚の色や模様が劣化してしまう例をネオンテトラとニューギニアレインボーを例に取り、実例を掲載させていただきました。
熱帯魚の色が鮮やかになる理由は、仲間とのコミュニケーションや繁殖活動、そして強さや美しさを仲間に鼓舞するためのものだと考えて良いかと思います。
単独で飼育した場合、コミュニケーションを取る相手もいないので、色を出すことや模様を出すこと自体が意味をなさないものになってしまっているのだと考えられます。
皆さんも、熱帯魚の色や模様を美しくしたいのであれば、同一品種の熱帯魚は複数匹で飼育する事をお勧めします。
もちろん、単独飼育が基本の魚もいるので、事前にその点は御確認下さい。