熱帯魚を飼育していると避けて通れないトラブルが魚の病気です。
昨日までは元気に泳いでいた魚が水面で口をパクパクしていたり、水槽の底でじっとしたままで動かなくなったり、外傷が突然発生していたり…。
魚たちも人間と同じように、多くの病気を持っている生き物になります。
的確な治療を行えば魚の病気を治すことは可能ですが、場合によってはお星様になってしまう事を覚悟しなければならないような場合も多々あります。
この記事では数多くある魚の病気の中で、「穴あき病」と呼ばれる魚の体に穴が開いたような外傷ができる病気を取り上げます。
私の飼育しているラスボラ・ヘテロモルファ・パープルと言う熱帯魚が穴あき病に罹患したのですが、その治療方法として塩水浴を行い完治をさせました。
その治療の過程や、穴あき病の罹患部分の回復の様子を紹介します。
ラスボラの穴あき病を発見した経緯
まず最初に、ラスボラの穴あき病の発見経緯から説明します。
私が管理する60cm規格水槽で、ラスボラ・ヘテロモルファ・パープルを2匹飼育していたのですが、1匹が水草の中に隠れてしまい出て来なくなりました。
ちょうど水草が伸びたのでトリミングをするタイミングだったのですが、水草を短く切った後で、その隠れていたラスボラが出て来た時に体側に穴あき病が発生しているのが発覚しました。
ずっと水槽の表側で生活していたラスボラだったので、水草の中に急に隠れ始めたのは何か理由があるのだろと思ってはいたのですが、穴あき病を発症し体調が悪い状況だったのです。
直ぐにそのラスボラを網ですくい、別の水槽に避難させて塩水浴による治療を開始しました。
実際に穴あき病になったラスボラの状態が次の写真になります。痛々しい穴あき病の罹患部が見て分かるかと思います。鱗が無くなり、内側の肉の部分が丸見えになって充血している状態です。
鱗は魚にとって様々な外敵 (寄生虫やウイルス) から身を守る手段になっています。
それが剥がれて無くなっているということは、その部分が寄生虫などの攻撃を受けやすい状況になっていると言えます。
このような穴あき病の状態になったら、発見次第すぐに治療を開始しましょう。
魚の病気は予防が一番大切ですが、もし病気を発症してしまったら早期発見・早期治療が鉄則です!
「塩水浴」という治療を選んだ理由
以前の記事でブラックモーリーの穴あき病を「グリーンFゴールドリキッド」で治療した例を紹介させていただきました (下のリンクを御参照ください) 。
今回も「グリーンFゴールドリキッド」で治療をすればよかったのですが、今回は敢えて塩水浴という方法を採用しました。
理由は、私が塩水浴という方法で穴あき病を治療した経験が無かったからです。
熱帯魚に関わらず、魚の病気には様々な原因があり、同じ病気であっても進行状況や症状の重さが異なることが一般的です。
そのため、同じ病気であっても、治療方法を最適化する必要がありますし、一つの方法で効果が見られなかったら別の手法で治療を進める必要性があります。
今後も穴あき病と言う病気と付き合っていくことを考えると、薬を使った治療以外にも塩水浴という方法も知っておくべきだと思ったのです。
そのため、今回は塩水浴でラスボラの治療をすることにしました。
塩水浴による穴あき病治療の方法
では、ここからは実際の塩水浴の方法や実際の治療の経過観察を紹介していきます。
別の水槽を用意して塩水浴を行うこと
最初に治療 (塩水浴) に使う水槽についてですが、熱帯魚を飼育している水槽に直接塩を投入するのではなく、小さな容器に塩水を入れて塩水浴を行います。
もちろん、水槽の中で飼育している全ての魚が穴あき病に罹患していたら、水槽の中を塩水にしてしまうのもアリかもしれません。
しかし、水草が入っていたり、他の健康な魚を飼育していることが大多数だと思いますので、専用の小さな容器で治療を行うようにします。
水槽については、ラスボラやプラティの様な小さな魚であればフィルターやブクブクが無くても飼育が可能です。
私は子供が使っているプラスチック製の虫かごを借りて塩水浴を行うこととしました。
ただし、冬に治療を行う場合には、ヒーターによる保温が必要になります。プラスチック容器はヒーターに対応していないので、ガラス水槽を一つ用意してあげなければなりません。
塩水浴の塩水の作り方
塩水浴の塩水の作り方ですが、穴あき病の場合には塩分濃度を0.3%から0.5%くらいにします。
0.3%の塩水を作るには、1L (1000g) の水に対して、塩を3gになります。0.5%であれば塩を5g入れます。
塩は家庭用のあら塩を使用しました。食用のあら塩です。
アクアリウムショップに行けば、塩水浴専用の塩が売られているかと思いますが、泣ければ家庭用の塩でも代用可能です。
使用する水は、カルキ抜きをした水道水を使用します。水に塩をしっかりと溶かせば塩水の完成です。
(冬に水温が低い時にはぬるま湯で塩を溶かしながら塩水を作るようにします。)
0.3%程度の塩水でも、舐めてみると結構塩辛いです。
しかし、海水と比較すると、海水は塩分濃度が3.5%程度もありますので、今回使用する塩水は実は結構低い塩分濃度です。淡水魚のエラに塩水が入っても致命的ではない塩分濃度です。
塩水用の水として、水槽の飼育水を使用される方もいるかもしれませんが、飼育水の中には細菌が混入しているので適切ではないと思います。
塩水浴によるラスボラの穴あき病治療の経過観察
ではここからは、塩水浴によってラスボラの穴あき病が治癒していく過程を時系列で見ていきたいと思います。
塩水浴開始の初日の状態
まず最初に、塩水浴開始の初日の状態です。
穴あき病の罹患部分は、少し血がにじんでいるようなところがあります。
治療を開始して直ぐの時は、治療用の水槽に全くなれていない状況になりますので、水槽は人通りの少ないような場所で管理してあげて下さい。
魚が治療用水槽という新しい生活環境に入ったばかりなので、魚には相当な緊張感がある状態です。
下手に驚かすと水槽のガラス面に衝突して、そのショックで命を落としてしまう事もあります。
また、塩水浴初日は餌をほとんど食べないと思いますので、餌やりは不要かと思います。
もし食べるようであれば少量を与えてあげます。
塩水浴開始から4日後の状態
次の写真が塩水浴4日目の状態になります。
穴あき病の罹患部分の傷は、かなり治ってきているのがお分かりいただけるかと思います。
治療用水槽の中には仲間がいないことや、慣れない塩水というストレスがあるため、ラスボラの体色が少し劣化していることは分かりますが、穴あき病の傷口は確実に治癒しています。
あと一息で傷は完治しそうな印象を受けます。
10日後に穴あき病がほぼ完治した状態に
次の写真が塩水浴開始から10日後のラスボラの様子になります。
写真では少し分かりにくいかもしれませんが、穴あき病で傷が出来た部分はほぼ傷口が塞がり、新しい粘膜で保護されているような状態になっています。
ここまでくれば、あとは魚の持つ自然治癒力を頼りにして問題は無いかと思います。
もう少し塩水浴を続けても良いのかもしれませんが、上の写真の通り、治療水槽での飼育はラスボラへのストレスが強く、体色が褪せてしまっています。また、少し痩せてしまっていることもわかります。
そのため、魚の自然治癒力で回復できるレベルになったら、治療を完了しても良いかと考えています。
最後にメチレンブルーで薬浴治療
最後になりますが、元々飼育していた水槽に戻す前に、1日だけメチレンブルーで薬浴します。
下の写真がメチレンブルーでの薬浴中の写真です。メチレンブルーを規定量の濃度で希釈して、ラスボラを薬浴させています。
治療水槽での塩水浴による治療中に予期せぬ雑菌・殺菌が体に付いている場合があります。
その雑菌・細菌を、元の飼育水槽へ持ち込ませないための処理です。
今回の例では合計11日間の治療で穴あき病治療が完了しましたが、治療にかかる日数は魚の種類や症状によって左右されます。
穴あき病がかなり進行している状態であれば、治療に必要な日数は増えますし、軽度であれば今回の様に比較的早く回復してくれます。
魚の様子をよく観察しながら、治療期間を決めてあげて下さいね。
穴あき病治療後に元の水槽で飼育を再開
穴あき病の治療が終わったので、ラスボラをもともと飼育していた水槽に戻してあげました。
最初は体色が褪せてしまい、ラスボラの群れとは離れて泳いでいましたが、1日経つと仲間の近くへ寄っていき混泳を始めています。下の写真の通りです。
写真の中で、左側のラスボラが穴あき病の治療を行った方になります。
まだ体側に穴あき病で傷ついた部分が残っていますが、他のラスボラと元気に泳ぎ回り、餌も大量に食べるようになりました。
穴あき病発病時には、餌も食べずに水草の陰に隠れてたことを考えると、治療が成功して健康的な体を取り戻せたのだと実感できます。
そして、さらに1週間後の状態が次の写真になります。上に写っているラスボラの体側を見ると、ほぼ傷口が完治している状態になっていることが分かります。
何はともあれ、無事にラスボラの命を救うことができました。
この記事の終わりに
この記事では、穴あき病に罹患した熱帯魚 (ラスボラ・ヘテロモルファ・パープル) を塩水浴によって治療をした実例を紹介させていただきました。
魚の病気と聞くと、治療がとても難しくあきらめるしかないと思われている方も多いかと思いますが、実際に塩水浴と言う簡単な方法でも治療が可能な場合があります。
魚の様子がおかしい場合、何の病気に罹っているのかを確認し、それと共に適切な治療を始めることになりますが、実際に病気が発症してしまう前に病気のことを知り、治療方法の知識を事前に身に付けておくことが大切だと感じます。
ただし、魚の病気は救える場合と救えない場合の両方があるので、覚悟が必要になる場面も出てきます。
しかし、ペットの一員として家にお迎えした命なので、病気が出た時はあきらめることなく治療という努力はしてあげて下さいね。
穴あき病に罹ったお魚が出てしまった方にとって、有益な情報となりましたら幸いです。