アクアリウム用LEDライトの特長と製品の比較ポイント

2014年のノーベル物理学賞は「青色発光ダイオードの開発」に携わった赤﨑勇終身教授、天野浩教授、中村修二教授に贈られました。

私自身、半導体に関わる仕事もしているので、この出来事で日本が歓喜の渦に湧いたことを今でも覚えています。

そして、青色発光ダイオードの開発によって、私たちの生活も大きく変化しました。青色のLEDが完成したことで、光の三原色の青・赤・緑が揃い、様々な色の光をLEDで作り出せるようになりました。特に大きく変わったのは、白熱球や蛍光灯に頼っていた照明が、LEDに置き換わったことです。

この変化はアクアリウムの業界にも波及し、今ではアクアリウム用のライトも多くがLEDになりました。勿論、今でも雰囲気を重視して白熱電球を使っている方もいらっしゃるかと思いますが、大部分はLEDに置き換わっています。

では、アクアリウム用のライトとして、LEDを使う利点は何なのでしょうか?

消費電力が少ないこと?明るさ?

この記事では、アクアリウムという視点に特化して、LEDの特長や利点、そして製品を比較する上で重要なポイントを説明していきたいと思います。


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LEDライトの発光について最低限知っておきたいこと

現在使われている照明器具は、LEDライト、白熱電球、蛍光灯の3種類です。

この照明器具の違いは色々とあるのですが、アクアリウム用のLEDを使う上で最低限知っておきたいことは「LEDが光る原理」と「LEDの消費電力 (発熱) 」の2点かと思います。

勿論、LEDの寿命は非常に長いことも特徴なのですが、この記事ではLEDが光る原理と消費電力 (発熱) に焦点を置いて説明していきます。

白熱電球は電球の中でフィラメントに高電流を流してフィラメント自身を発光させ、蛍光灯は蛍光管の中で蛍光体を光らせることで発光します。これに対して、LEDは半導体材料を直接光らせるという方法で発光します。

(LEDとは、Light Emitting Diodeの略で、光を放つダイオードという意味です。)

ちなみに、ダイオード (Diode) はギリシア語で「Di(2つ)」+「Ode(道)」という二つの言葉を足し合わせた言葉で、2つの電極間に電気の通る道を作るという由来から来ている言葉です。

半導体を発光させるという技術は、説明し始めるととても難しい話になってしまい、それだけでブログ記事が何本かかけるので、ここでは止めておきます。しかし、半導体という材料を直接発光させることができるため、電気エネルギーを光エネルギーに直接変換することができるという特徴があります。

そのため、白熱電球や蛍光灯に比べて、LEDは消費電力が非常に小さな光源になります。白熱球に比べると1/6から1/5の消費電力で同じくらいの明るさを得ることができます。

また、半導体を直接光らせるというところが技術の肝でもあります。LEDには様々な色がありますが、特定の色を出すために異なる半導体材料が使われたり、同じ半導体でも組成が少し異なるような半導体で色が調整されています。

赤色を発光するのが得意な半導体もあれば、緑色を発光するのが得意な半導体もあるのです。中でも青色を発光させる材料を作ることが本当に難しく、それを開発したことがノーベル賞に繋がった経緯があります。

アクアリウム用のLEDをのぞき込むと、赤色、青色、白色と3色のLEDが使われていることが多いですが、全て異なる半導体材料で作られており、それらを組み合わせることで水草の育成に適した光源を得ることができるのです。

LEDライトがアクアリウムに適している理由

LEDライトの持つ特徴というのは、実はアクアリウム用のLEDライトを作るのにとても適しています。

蛍光灯や白熱電球ではできなかったことが、LEDを使うことで実現できていることもあります。以下で、詳しく紹介したいと思います。

LED自体の発熱が少なく飼育環境への影響が小さい

LEDを使用されている方であれば御存じかと思いますが、LEDライトは点灯中にそこまで熱く発熱をしません。

これは、LEDの消費電力が低いというところに関係しているのですが、消費電力が低いということは言い換えれば抵抗が低いので、抵抗で発熱する電力が少ないということなのです。

そのため、LEDを水槽の上に設置しても、LEDの熱で飼育水の温度が上昇してしまうようなことはありません。勿論、LEDにも電気抵抗があるので若干の発熱はありますが、水面とのLEDの距離が10㎝程度あれば、熱が飼育水に伝わることはありません。

つまり、LEDは水槽内を明るく照らしてくれる十分な能力を持ちながら、熱の観点で飼育環境にはほとんど影響が無いという優れものになるのです。

逆に絶対に注意が必要なのは白熱電球を水槽用ライトとして使用される場合です。白熱電球が点灯している時、中のフィラメント温度は約3000℃、電球の表面温度は150℃程度に達します。

点灯中の白熱電球を直接触ったら火傷をしますし、白熱電球周囲の温度もかなり上がりますので、水槽に近ければ水温を上げる効果があります。もし白熱電球をアクアリウムに使用される際には、火傷や飼育水の水温上昇に注意を払わなければなりません。

LEDは水草に必要な赤や青の特定の光を出すことが得意

上でも少し触れましたが、LEDは特定の光を発光させるという事が得意な光源です。淡水アクアリウムの世界では、水草の光合成に光が必要ですが、日光の代わりに光を供給してくれるのがLEDライトです。

植物の葉や茎は、青色と赤色の光を主に吸収して、緑色の光の一部を葉っぱの表面で反射する特性を持っています。これが植物の葉が緑色に見える原理です。

つまり、植物が光合成を行うためには青と赤の光が少し多めに必要になるということです。ここで、LEDの得意技である特定の光を出すという特徴を生かし、アクアリウム用のLEDには青色と赤色のLEDが多用されているのです。

アクアリウムショップで水槽用ライトを選ぶときに、説明欄の光の強度を示すグラフを確認してみてください。青色と赤色の光の成分が強いことが説明されていると思います。そのため、白色のLEDをメインにして、それに加えて青と赤のLEDを補うような組み合わせが、一般的なアクアリウム用LEDの主流となっています。

コンパクトな筐体で強い光を得ることができる

LEDの消費電力が小さいことにも繋がっているのですが、LEDの発熱量が小さいということで、LEDライトの装置自体も大きさをコンパクトにすることができます。

これはアクアリウムにとって重要なことだと思います。フィルターやライトなど、様々なものが水槽の周りには設置されるので少しでもコンパクトにすっきりした状態にするためには、ライトのサイズが小さいこと自体が利点になります。

少し話は変わりますが、一昔前の投影用プロジェクターには、とても強いハロゲンランプ光源を使っていたものも多かったため、非常に発熱が大きく、冷却ファンがすごい勢いで回るものがありました。つまり、強い光を得るということは、熱との戦いでもあったのですが、LEDの開発によって放熱面が比較的容易になりました。

アクアリウム用のライトも、厚さが非常に薄い商品も登場してきていますが、LEDの発熱が少なく放熱の設計が容易になっているという利点があるから実現できた製品であると言えます。蛍光灯や白熱電球では、厚さ数cmのライトなんて実現できませんでしたからね…。


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アクアリウム用LEDライトを購入するときに注意すべき点

LEDライトの特徴やメリットが分かったところで、次に紹介するのは実際にLEDライトを購入する時に確認すべき事項です。

勿論、価格や大きさも重要になるのですが、LEDライトの性能と言う観点でお話をしたいと思います。

どの色の光に強みのあるLEDなのか?

アクアリウム用のライトを購入する時に、概ねどの商品にも下の図のようなスペクトル図が紹介されています。X軸 (横軸) に波長 (光の色) が記されており、Y軸 (縦軸) にはその波長の光の強さが表されています。

上のスペクトル強度の図は、一般的なアクアリウム用LEDライトのスペクトルのグラフですが、青色と赤色の波長が強くなっており、青色と赤色の光が多めに入っていることがわかります。

この赤色のスペクトルが強ければLEDライトの光が全体的にピンク色に見えてきますし、青が強ければさわやかなブルー系の色に変化してきます。御自身の水槽のレイアウトや熱帯魚の種類にあった色を持つ水槽用ライトをお探しの時には、この部分を参考にすると良いです。

様々な淡水水槽に使えるオールラウンドなアクアリウムライトは、青色と赤色が少しだけ多く、それ以外の色が幅広く含まれるような配合になっています。

少しだけ話を脱線させますが、光は様々な色が混ざり合うことで白色に変化します。絵の具は様々な色を混ぜると黒色やこげ茶色に近いような色になってしまいますが、光の場合には逆に白色になります。上のスペクトルの図には青色と赤色以外にも緑や黄色などの色が含まれています。そのため、このスペクトルの光を現物で見ると白色の光に見えます。光の豆知識として知っておくと良いかと思います。

複数の商品を比較する時は「光スペクトル」の強度に注意すること

上で紹介したアクアリウムライトのスペクトル強度のグラフですが、このグラフを複数のメーカーで比較する時に注意があります。

色々なメーカーのアクアリウム用ライトを見てきましたが、基本的にY軸 (縦軸)
が「相対強度」と呼ばれるパラメータで記載されています。「相対強度」とは何かというと、特定の波長の強度を1として、他の波長の強さを表したパラメータです。

例えば、下の図では赤色の強度が1で、青色の強度が0.9となっています。

これは「青色の強度が赤色よりも10%弱いです」ということを意味しており、各色の光の絶対値 (強度) を表しているわけではありません。このグラフを見ると「赤が一番強い」ということは分かるのですが、その赤がどれだけの強さを持っているかは分からないのです。

そのため、各メーカーが発表しているLEDのスペクトルグラフを並べても、真の比較ができない状態の場合が多いのです。

ここで分かりやすくするために、もう一つ例を挙げます。下の図の(a)のグラフには、メーカーAとBの相対強度で表したLEDライトの性能を比較しています。どちらのメーカーも青色が強く、概ね似たような性能を持っています。

しかし、縦軸を絶対値で表した光の強度に置き換えるとどうでしょうか?

隣の(b)の図に示すように、メーカーBの方が強度が強いことが分かります。つまり、相対強度では読み取れなかったLEDの強度が比較できるようになったのです。

この例の様に、相対強度で表したスペクトルのグラフは、どの色の光がどのくらい入っているのか?というところを確認するくらいのことしかできません。

もし、光の強度が強いLEDが欲しければ、スペクトルだけではなく、消費電力や光の強さを示す「ルーメン」といった別のパラメータで比較をすることが必要です。基本的に消費電力やルーメンが高いほど高輝度のLEDになります。

実際の製品があれば現物を確認しましょう!これが一番大事です

アクアリウム用のライトは、インターネットでも購入できますが、できればアクアリウムショップで現物を見て買うことをお勧めします。

上で紹介したように、LEDライトの光のスペクトルや強度などは商品紹介のページで確認できますが、実際にどのような色をしたライトなのか?明るさはどのくらいなのか?という点は見ないとわかりません。

インターネットが普及している時代ですが、水槽用のライトは「百聞は一見に如かず」ということで、現物確認をすべきだといつも思っています。

この記事の終わりに

この記事では、アクアリウムを楽しむために必須の設備であるLEDライトについて、LEDライトの特徴やLEDライト選びで注意すべき事項を紹介させていただきました。

青色発光ダイオードの発明以降、照明の分野に一種の革命が起こりましたが、アクアリウム用のライトもほとんどがLEDに置き換わっています。

LEDライトの特徴である「発熱が少ないこと」や「特定の色の光を出すのが得意」という点は、アクアリウムライトにも最適な性能だと言えます。

今後、さらに素晴らしい照明機器が発明されるまでは、アクアリウム用ライトもLEDが牽引していくことになります。少し難しい物理のお話もありますが、最低限必要な知識は身に付け、LEDライトと上手に付き合っていきたいですね。