古くから日本人に愛され続けている観賞魚「金魚」。
誰もが子供の頃に金魚すくいで取った金魚を小さな水槽や容器で飼育した経験があるのではないでしょうか?
そんな日本人に馴染み深い金魚ですが、飼育を続けていると様々なトラブルが起こる事があります。
特に魚の病気や外傷などは、誰もが経験が少ないが故に対応に困ってしまうトラブルです。
この記事では、金魚の外傷の中で「頭部が白く変色してしまう」という症状について、実例と原因を御紹介させていただきます。
「オランダ獅子頭」や「琉金」、また「らんちゅう」などのお腹の大きな金魚に起こりやすい外傷でもありますので、もし同じ症状に見舞われた場合には以下で紹介する対処法も一つの方法として御参考になれば幸いです。
金魚の頭部が白くなった実例について
まず最初に、本記事で紹介する「頭部が白色化」した金魚の実例を紹介させていただきます。
下の写真は「オランダ獅子頭」の頭部の一部が白色化してしまっている状態の写真です。黄色の矢印で示す部分に注目していただくと、違いがわかるかと思います。
もともとは体と同じ濃いオレンジ色の頭部でしたが、一部が白色化してしまい、オランダ獅子頭を象徴する綺麗な頭部の見栄えが悪くなっています。
また、次の実例は「丹頂」の頭部が白色化した実例になります。
丹頂の例は症状が軽いものになりますが、丹頂の特徴的な赤い東部の一部が、白色化していることが見て分かります。
この記事をご覧の皆様の中にも、飼育している金魚の頭部がこのような状態になったことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか?
魚体の色が白い金魚であれば見分けが付かないですが、赤やオレンジの頭部を持つ金魚であれば、このように白色化する現象が現れると直ぐに気付くと思います。
このように頭部が白色化してしまう原因とは何なのでしょうか?
病気なのでしょうか?それとも、外傷なのでしょうか?
これについては、私のこれまでの金魚飼育の中で、一つしか原因が思い当たりません。以下で紹介したいと思います。
頭部の白色化は頭部が水面から出たことによる乾燥状態と考えられる
頭部が白色化した金魚に共通して起こっている現象があります。
それが「頭部が水面から出ている」という状況になります。
下の写真がその一例になるのですが、オランダ獅子頭が水面近くに浮いており、頭部が水面から空気中に出てしまっている状態になっています。
皆さんが飼育している金魚の中にも、この写真の様に水面にぷかぷかと浮いてしまっている状態の金魚はいませんか?
この状態で上から水槽をのぞき込むと、金魚の頭部の一部が水面に出ていることが見て取れると思います。
このように体の一部が水中から空中へ出てしまうと、どのようなデメリットが起こるのでしょうか?
金魚に限らず、魚は基本的に水中で生活する生物です。そのため、魚体が空気に触れることを前提とした作りになっていません。
魚は乾燥した人の手で触られたり、地面に置かれるようなことがあると、体を保護する粘膜の一部が損傷してしまいます。
その状態と言うのは、人間でいうところの「火傷」を負った様な状態になります。
つまり、上で紹介したオランダ獅子頭や丹頂の頭部は、空気に長時間触れてしまったことで頭部が乾燥し火傷の様な状態になっているものと考えられるのです。
金魚の魚体が浮き上がるのは転覆状態の可能性が高い
魚は体の中に持つ浮袋で浮力を調整し、魚体が浮かび上がらずに水中を泳げるような体のつくりを持っています。
しかし、体が浮き上がってしまうというのは、浮力の調整が思うようにできていない状態であると言えます。
このように浮力が強くなり金魚が正常な泳ぎが出来なくなる状態を「転覆状態」と呼びます。
(転覆状態の中でも細菌が原因のものは「転覆病」と呼ばれています。)
今回、上で紹介したオランダ獅子頭と丹頂についてですが、これらの金魚は転覆病ではありません。
理由としては、転覆状態になるのは一時的なもので、1日もしないうちに元の正常な泳ぎに戻っていたためです。細菌性の転覆病の場合には、長く転覆病が続き、魚体がひっくり返ってしまうような状態になるものもあるくらいです。
上記の金魚の例では、実は餌を食べた後になると体が浮き始めて転覆状態になるという症状が出ていました。
これは、餌 (浮上性の餌) を一気に食べすぎたことにより、体内の浮力が上がってしまい、転覆状態になったものです。
つまり、まとめると…
① 餌の食べ過ぎで体の浮力が増す
② 浮力を制御できずに、頭部が水面に出てしまう状態になる
③ 水面から出てしまった頭部が乾燥して火傷を負ったような症状になる
④ その結果として、頭部が白色化した
という過程を経たものと考えられます。
特に、お腹が大きな金魚は、腹部の浮力が少し大きい傾向があるようで、餌を食べた後に転覆状態になる傾向が強いです。
私自身、今までに様々な金魚を飼育しましたが、体型が祖先の鮒に近い「和金」や「コメット」は餌を食べても転覆状態になるものはありませんでした。
しかし、オランダ獅子頭や丹頂、琉金、らんちゅうなどの品種改良でお腹が大きくなった金魚は転覆病になる傾向が強いと感じます。
そのため、お腹が大きい金魚は注意が必要かと思います。
白色化した頭部は治るのか?
白色化した頭部ですが、基本的には金魚の自然治癒力に任せておけば自然と治っていきます。
上で例に取り上げた2匹の金魚も、10日ほど経つと白色化した部分が無くなっていました。
白色化した部分の症状がひどい場合には、魚の外傷治療の薬浴 (メチレンブルーなど) をすることも必要かと思います。
最も大事な事は、日々の金魚の観察の中で頭部が白色化したことに気付き、以下で示すような対応をしてあげることかと思います。
解決する一つの方法は餌やりの工夫
では、頭部が白色化するという症状、言い換えれば金魚が転覆状態にならないようにするために必要な管理方法はあるのでしょうか?
私が個人的に注意していることは「餌やり」です。
上記の通り、餌を食べすぎたりすると転覆状態になることが分かっているので、餌やりを工夫すれば転覆状態になることを防ぐことができ、それが頭部の白色化抑制に繋がります。
例えば、餌を与える際に一度に大量の餌を与えないこと。金魚は胃袋が無いので、与えれば与えただけ食べ続けます。そのため、食べる量が原因で転覆状態になることが多々あります。一度に与える量を制限し、消化を助けるように餌やりをするだけでも効果が現れると思います。
一般的に「熱帯魚や金魚の餌は5分で食べきれる量」という指標がありますが、これは私は誤解を招く表現だと思います。魚によって食べる量も食べるスピードも違うので、与える量を時間で管理するのは間違っていると考えます。
金魚一匹一匹の体調や体質を考えながら、最適な餌の量を考えていくことが重要ですし、それこそが魚の飼育を成功させる一つの重要なポイントだと思っています。
また、餌の種類を変えることも一つの手です。浮力の強い浮上性の餌では無く、沈下性の金魚の餌を使うことです。餌に浮力があることが原因だとしたら、浮力の無い餌を利用してあげれば解決するかもしれません。実際に私は沈下性の金魚の餌を使って飼育するようにしました。
この記事の終わりに
この記事では、金魚の頭部が白色化してしまうという現象について、その原因と対策について紹介をさせていただきました。
金魚は体の浮力が増すと、体の一部が空中に出てしまうようになります。空中に露出した体の一部は、魚体の粘膜が乾燥し損傷してしまうため、それが原因で体の一部が白色化してしまいます。
そのため、金魚の魚体の一部が白色化しているような場合には、金魚の状態を観察して体が浮いていないかどうか確認をしてあげて下さい。
特に餌やりの直後は、金魚の種類によっては体が浮きやすい状態になるので、注意して観察してあげることをお勧めします。
魚体の一部が白色化すると、せっかく綺麗な金魚の姿が台無しになってしまうので、変化に気づいたら早めに対策をしてあげて下さい。