カージナルテトラと言えば、美しい小型カラシン科の熱帯魚を代表する魚と言っても過言ではありません。
背中の光り輝く青色と腹部の赤色が特徴的で、水草レイアウトの水槽から石組のレイアウト水槽まで、様々な水槽を際立たせてくれる素晴らしい熱帯魚です。
また、飼育方法も難しくなく、初心者からベテランの方まで比較的簡単に飼育できること、そして価格も安価であることも根強い人気の理由かと思います。
アクアリウムショップで見るカージナルテトラに「ワイルド」と「ブリード」と書かれた札を見たことがある方もいらっしゃるかと思います。その名の通り、ワイルドは野生のカージナルテトラを捕まえてきたもの、ブリードは人工繁殖させたものです。
皆さんはその違いがわかりますか?
今回、カージナルテトラのワイルドとブリードを10匹ずつ飼育してみてわかった違いについて、私の所感から紹介させていただきたいと思います。見た目だけではなく、水槽内での振る舞いなどにも違いが見えてきました。
体の発色や見た目は素人目には違いがわからない
まず最初に最も注目すべき点は「見た目」に違いがあるのか?という点だと思います。熱帯魚は観賞魚ですので、その魚体の美しさが重要になります。
一般的には、熱帯魚はワイルド生体の方が自然の色に近い美しい色が出てくると言われますが、カージナルテトラはどうなのでしょうか?
実際に、ワイルドとブリードの見た目を比較してみたいと思います。
ちなみに、ワイルドのカージナルテトラは、ネグロ川産の生体です。
ワイルドとブリードの見た目の比較
とある熱帯魚のサイトでは、ワイルドとブリードの見た目は非常に大きな差があると記載がされていました。
その見た目の違いを期待してはいたのですが、実際にはほとんど変わりませんでした。このような事を記載してはいけないのかもしれませんが、目の肥えた方でないとワイルドとブリードの違いは絶対に分かりません。
上の写真がワイルドのカージナルテトラ、下の写真がブリードのカージナルテトラです。同じくらいの光量の水槽に入れているので、光の当たり具合による差は小さいと思ってください。
ワイルドとブリードの見た目の何が違うんですか!??
私に教えて下さい!?
見た目はほとんど変わりませんし、成長の早さ、そして成魚の大きさもほとんど変わりません。体型はワイルドの方がスリムになりやすいと聞いたこともありますが、その違いも出ていません。
ちなみに、飼育環境には大きな差はありません。ワイルドとブリードは別々の水槽で飼育していますが、餌も同じものを与えていますし回数も量もかわりません。また、水替えの頻度やライトの点灯時間なども同じ環境です。
ブリードの歴史が浅いためワイルドとの差が小さい可能性
では、何故カージナルのワイルドとブリードの見た目に差が出にくいのか?と言う点について考えてみたいと思います。
一つ言えることは、カージナルテトラのブリードの歴史がそこまで長くないということかもしれません。
ブリードの魚は、ブリードを繰り返すことで徐々に野生の体からブリードの個体に性質が変わっていきます。つまり、ブリードの環境で繁殖を繰り返すことで、真のブリード個体としての特徴・性質が出てくるようになり、ワイルドとの差が明確になる傾向があります。
そのため、私が購入したブリードのカージナルテトラは、まだブリードの歴史が浅く、ワイルドの性質を色濃く継承しているカージナルテトラだったのかもしれません。
逆に言うと、そのようなブリードの歴史が浅い生体を手に入れることができれば、ワイルドに近い発色や特徴を持ったカージナルテトラを安く入手できるということになるのかもしれませんね。
ブリードを繰り返して、野生の性質が抜けきったカージナルテトラがいれば、ワイルドのカージナルテトラとの見た目の違いは大きなものになったのかもしれません。
ワイルドとブリードで異なると感じた特徴と性質
今回の比較では、ワイルドとブリードの違いとして、色や形の違いはあまり感じることができませんでした。
しかし、ワイルドとブリードで明らかに違うであろう特徴が、飼育していて分かったので、その点を紹介したいと思います。
ワイルドのカージナルは群れを作りやすい
まず一つ目は、ワイルドのカージナルテトラの方が群れを作りやすいということです。
ワイルドのカージナルは、自然環境の中で過ごしていた経験があるため、外敵から身を守るため、群れを成して生活します。
そのため、水槽の中でも群れを作って泳ぐ習性が残り、一つに固まって泳ぐ姿が頻繁に見られました。
それに対してブリードのカージナルですが、外敵の少ない環境で育ったためか、あまり群れを作るような素振りが無く、単独行動するようなものが結構います。
そのため、水槽の中でカージナルテトラが群泳する姿を見たい方は、ワイルドのカージナルテトラを選んだ方が良いかと思います。確実な事は言えないかもしれませんが、ブリードよりはワイルドの方が群泳し易いと言えるのは一つの特徴だと思います。
ワイルドの方が怖がりな傾向がある
ワイルドのカージナルテトラは怖がりな性格を持っているものが多いです。
餌の時間に水槽の前に立つと、ブリードのカージナルは餌の時間だと思い、水槽の前に集まってきます。しかし、ワイルドの方は水槽の前に立つと物陰に隠れるような素振りを見せます。
ワイルドのカージナルテトラは、餌やりの時間を覚えるまで約1か月くらいは要しました。つまり、1カ月は人の餌やりの時間に慣れず、ワイルドの特徴が抜けきらないということなのかと思います。
もちろん、1か月飼育しても怖がりで物陰に隠れるカージナルテトラもいます。
ワイルドの方が人口飼料が苦手気味
私が購入したワイルドのカージナルテトラは、ネグロ川から輸入された直後のものを購入しました。
そのため、飼育を始めた当初は、人口飼料に慣れていないようで、あまり人口飼料をあまり食べてくれない状態が続きました。
約10日位かけて人口飼料を与え続け、やっと人口飼料を食べ物だと認識してくれるようになってきたことを今でも覚えています。
ブリード個体は人口飼料で育てられてきた魚なので、自分の水槽で飼い始めて直ぐに人口飼料をたくさん食べてくれました。
水槽の中で餌を食べさせるという観点ではブリードの方が安心感はありますね。
ワイルドもブリードも他の魚と混泳させても問題無し
カージナルテトラを飼育される方は、他の魚と混泳させている方が多いのかと思います。
私自身も、カージナルテトラの温和な性格を利用して、他の魚との混泳を楽しんでいます。
カージナルテトラの混泳については、ワイルドとブリードで違いがあるのでしょうか?
ワイルドを購入した当初は、何かが起こるかもしれないと思っていたのですが、特に大きな問題は起こっていません。
ワイルドのカージナルの水槽には、アフリカンランプアイ、レインボーフィッシュ、コリドラス等が泳いでいますが、喧嘩したり他の魚と小競り合いになるような事は全くありません。
総括としてブリードを選んでも問題は無い
最後に「ワイルドを選ぶべきなのか?」について考えてみたいと思います。
私の結論からして、カージナルテトラは安価なブリードを飼育して全く問題無いと思います。
もしかしたら、ブリードの回数を重ねることで、ワイルドのカージナルとの色の違い等が出てくるかもしれませんが、現時点では熱帯魚ショップで確認しても、そこまで変わっている様子は無いと認識しています。
ワイルドを選ぶ理由ですが、基本的には「現地で採取されたワイルドのカージナルを飼っている!」と言いたい方や、「私はワイルドとブリードの違いが明確にわかる!」という自信がある方は選んでも良いかと思います。現時点では、ワイルドのカージナルテトラを選ぶことは、自己満足的な世界なのかもしれません。
ある程度アクアリウムを続けている自分の目でも、ほとんど違いが分からないので、その価値を見出せるようになったらワイルドに手を出しても良いのかと思います。
最後になりますが、カージナルテトラのワイルドとブリードが50匹ずつ混ざった水槽があるとして、貴方は間違うことなくブリードとワイルドを見分けられますか?
では!