「アルテミア」という甲殻類の小さな生物を御存じですか?
恐竜の生きていた時代から姿を変えることなく今日まで種を繋ぎ続けてきた凄い生物です。「生きた化石」と呼ばれるのにはその背景があります。
この記事では、夏休みの自由研究にも使えるアルテミアの育て方について御紹介したいと思います。
生きる化石「アルテミア」について
アルテミアは、実は恐竜の生きていた8500万年前から姿形を変えることなく生き続けている甲殻類の生物です。
エビを細く長くしたような体を持ち、色は白色から透明がかったような特徴があります。エビが泳ぐように水中を泳ぎ回り、小さな水槽でも飼育が可能です。
長期保存可能な乾燥卵を海水に浸すと、わずか1日で孵化するという特徴を持ち、生後20日位で大人のアルテミアになるという成長の非常に速い生物です。
アルテミアの卵は、その外殻によって中に入っている核となる部分が保護されており、水分が無くても10年以上卵が保存されるという凄い特性を持っています。
例え卵を冷凍庫で冷やしたり、多少高温の環境に置いても水に浸せば孵化して種族を残すことが出来るという強い生命力を持っています。
この生命維持力の強さが、恐竜時代から変わることなく生き続けている理由なのだと思います。
飼育に必要なもの
① 乾燥したアルテミアの卵
アルテミアの卵は、先に紹介したように、乾燥卵として市販されています。
近くのアクアリウムショップに行けば入手が可能であると思いますが、ネット通販でも購入可能です。
アルテミアは簡単な飼育キットも販売されているので、最も簡単に観察を楽しみたい方は、飼育キットを購入することをお勧めします。
② 水槽
水槽は正直なところ、何でもOKです。
メダカの飼育に使われるような小さな水槽でもいいですし、何なら料理に使うボールの様な容器でも構いません。
あまり水量が多いと、水替えも大変ですし観察も難しくなるので、100mlから200mlの海水が入れられる水槽がお勧めです。
③ 海水 (人工海水)
海水に関しては人工海水で問題ありません。
人工海水のセットはホームセンターでも安く販売さえていますし、飼育キットを購入すれば、人工海水の元も入っていると思います。
また、人工海水を作る時の注意ですが、水道水を使用して作る場合には、必ずカルキ抜きをしてください。市販のカルキ抜きも使えますが、1日~2日くらい水を放置しておけば勝手に抜けていきます。飼育を始める2日前に水槽に水を入れて放置しておくと良いかと思います。
④ 餌について
アルテミアの餌は、生後1週間くらい経って、1mmくらいの大きさになってから与え始めます。
餌は、市販の金魚の餌を細かく砕いたものでOKです。また、アルテミアはお餅にかける「きな粉」も餌に利用できるので、台所で余っているものがあれば、それを使っても問題ないです。
餌の与え過ぎは、水槽の飼育水を汚すだけなので、適量を与えるように心掛けけてください。
⑤ スポイトは水替えに必須
アルテミアが大きくなって、餌を食べ始めるとどうしても水が汚れてきます。
アルテミアは体が小さい時には食べる量すくないため、与えた餌の食べ残しが原因で水が汚れることが多いです。
水替えの際に、アルテミアを流さないように水替えするのは至難の業なので、スポイトでアルテミアが無い場所から水を抜いたり、食べ残しの餌を吸い上げるためにスポイトが重宝します。
孵化から大人になるまでの飼育の流れ
アルテミア飼育の水温について
まず、全体を通じて守るべきことですが、アルテミアの飼育に適した水温は25℃前後です。熱帯魚や金魚の飼育水槽と同じ水温が適正水温となります。
冬の寒い時期にはヒーターを使ったり、水温が最低でも20℃以上を保てるような場所で育てることが必要です。そのため、ヒーターを使用しないのであれば、アルテミアを簡単に飼育するのに適した季節は春から秋にかけての期間となります。
ただし、夏の季節は室内温度が40℃以上にもなる場合があるため、そのような部屋での飼育は不可能です。アルテミアはエビの仲間なので水温が高いと茹で上がってしまい、命を落とす可能性が高いです。そのため、夏の暑い時期にはなるべく涼しい場所で育てるようにしましょう。
①卵を海水に入れる
アルテミアの乾燥卵は、非常に小さいため、ピンセットの先を湿らせて卵を吸着するようにして海水の中に入れるようにすると良いです。
袋から直接海水に入れようとすると、かなりの量の卵が入ってしまうため、過密状態となり飼育環境がよくありません。
ピンセットの先に付着した卵でも数十個から百個くらいの卵ががあります。飼育する容器の大きさにもよりますが、0.1Lくらいの小さな容器で飼育する場合には、卵の入れすぎには注意しましょう。
②約1日前後で卵から孵化する
卵を入れてから約1日すると、卵からアルテミアの赤ちゃんが負荷してきます。
販売されている卵の保存状態にも依存するかもしれませんが、概ね2日待てば水中でモゾモゾと動くアルテミアの子供を見ることができると思います。
この段階では、まだ小さいので餌を食べられません。餌を当てると水質の悪化に繋がるので、餌は生後5日くらいはやらずに待ちましょう。
③約5日位で形が視認できる大きさに
卵から孵化して約5日くらい経つと、肉眼でもしっかりと確認できるくらいの大きさに育ちます。体長が約1mmくらいといったところです。
生まれて間もないころは、単なる微生物にしか見えなかったのですが、1mmくらいになるとエビの様な形がわかるようになってきます。
板の写真で黒色の矢印のある部分に、小さなアルテミアが確認できると思います。写真に撮ると、形が全く分からない細長い生物ですが…。
そして、体調が1mmを超えるくらいの時期から餌やりを開始します。
餌は魚用の人工飼料を細かく砕いたものや、きな粉でもOKです。どちらかというと、きな粉よりも熱帯魚用の餌の方がアルテミアの食いつきが良いです。与え過ぎは水の汚れを招くので、適量をほんの少しずつ与えるようにしてくださいね。
④約10日で2mmくらいの大きさまで成長
約10日くらい経つと、体調も大きくなり、約2mmくらいまで成長します。
ここまで大きくなると、肉眼でもきちんとエビの様な形をしたアルテミアの姿を捉えることができるようになります。また、目の位置もわかるようになってきます。
餌についても、魚用の人口飼料をしっかりと食べる様子が分かるようになるので、飼育と餌やりを楽しめるのもこのくらいの時期からになります。
⑤約2週間から20日で大人のアルテミアになる
生後、約2週間経つとほぼほぼ大人のアルテミアに育ちます。
目で見ても、ちょっとグロテスクなエビの様な姿になります。
ここまで成長出来たら、アルテミアの飼育は成功と言って良いかと思います!
【飼育のポイント】飼育水の水替えについて
水槽の飼育で最も気を付けなければいけないことは水替えのタイミングです。
特に、アルテミアを育てる簡易水槽はフィルターなどの大掛かりな設備が無く、水量も少ないため、水が汚れていく速度が速くなりがちです。
そのため、餌のやりすぎやアルテミアの数が多くなると、あっという間に飼育水の中のアンモニア濃度が上がり、アルテミアの致死量に到達してしまう可能性があります。
アルテミアの飼育数にも依存しますが、なるべく2日か3日に一度くらいは水槽の水半分の換水を行って、清浄な状態を保つようにすることをお勧めします。
私自身、最初に子供と一緒にアルテミアを育てた時は、餌を与えて水換えをしなかったので、水質が悪くなりすぎて全滅した経験があります。
【豆知識】アルテミアはアクアリウムでも重宝されている
実はアルテミアは、小さな小魚の餌としてアクアリウムの世界では有名です。
名前はアルテミアではなく「ブラインシュリンプ」と呼ばれていますが、甲殻類の生きる餌をいつでも手に入れることが出来るため、自宅でも生きた餌を熱帯魚に与えることができます。
特に生後間もない小型の稚魚に関しては、小さな餌しか食べれないので、ブラインシュリンプが最も適した餌となります。また、甲殻類に含まれる赤色を強調する成分により、熱帯魚の持つ赤色が鮮明に表れる「色揚げ」の効果も期待できる餌となっています。
アルテミアを飼育するという記事の中で、アルテミアが熱帯魚の餌になるという話をするのは、ちょっと可哀そうな気もしますが…。
この記事の最後に
この記事では、恐竜の生きる時代から姿を変えることなく生き続ける「アルテミア」の孵化から育成までの詳細を御紹介させていただきました。
人工海水さえ用意できれば、誰でも簡単に飼育できるので、小学校の自由研究などに最適なテーマにもなるかと思います。
アクアリウムショップやホームセンターでも卵が手に入ると思うので、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか!?