釣り人の多くが一度は釣り上げたり、見たことがあるであろう魚…「アイゴ 」。
サビキ釣り、ぶっ込み釣り、フカセ釣り…様々な釣り方で釣ることが出来るアイゴですが、基本的に釣りの対象魚となる場合が少なく、釣り場では「外道」として考えられることが多い魚です。
アイゴは市場に出回ることも無く、スーパーマーケットや魚屋さんで販売されることもほとんどありません。
その理由の一つは、アイゴの持つ毒針の存在や独特な香りだと思います。
アイゴは背ビレなどに毒針を持ち、刺されるとしばらく腫れが引かないという状態になります。
そのため、釣れても直ぐにリリースされる釣り人が多く、食べるための魚と言う認識がほとんどありません。
しかし、実はアイゴは、適切に処理をすればとても美味しくいただける魚なのです!
この記事では、アイゴを美味しくいただく方法として一夜干しの処理と実際に食べてみた感想を御紹介したいと思います。
アイゴの一夜干しを食べてしまうと、アイゴが釣りの外道なんて思えなくなるかもしれませんよ!
筆者もアイゴは常にリリースしていました…
私自身は海釣り歴も長いのですが、「アイゴ」という名前を耳にすると、真っ先に思いつくイメージが「毒魚」でした。
堤防でのサビキ釣りで釣れる小型のアイゴやフカセ釣りでチヌの外道として釣れる30cmクラスのアイゴも、全てひとくくりに毒魚として扱い、釣れた後には直ぐに針を外してリリースしていました。
毒針を持つ魚はアイゴ以外にも多く存在しますが、小学生の時にオニオコゼの針に刺されて痛い思いをしてから、毒針を持つ魚には良いイメージを持つことが出来ませんでした。
しかし、2021年8月に堤防で出会った釣り人が良型のアイゴを釣り上げられたのですが、その方から「アイゴは逃がすのはもったいないよ!一夜干しにしたら美味しいよ!」と言われたのです。
アイゴは毒針だけでは無く、見た目もそこまで良くはないので、美味しそうな魚にも思えませんでした。
しかし、毒針を適切に処理する方法も教えていただき、実際に釣り上げたアイゴを家で一夜干しにしてみることにしたのです。
さて…独特の臭いもあると言われるアイゴですが…その味はいかに…??
アイゴの毒針の位置と除去方法 (一番注意が必要な作業)
アイゴは御存じの方も多いかと思いますが、鰭 (ヒレ) に毒針を持つ魚です。
運悪くこの針に刺されてしまうと、刺された箇所が腫れて痺れるような状態が数時間続くとのことです。
私自身はアイゴの毒針に刺されたことが無いので、経験談をお話しすることはできませんが、刺されないに越したことはありません。
さて、アイゴの毒針ですが、下の写真の通りです。
背鰭、腹鰭、臀鰭の3つの鰭に毒針を持っています。
毒針の拡大写真も掲載しておきますが、鋭い針が鰭から飛び出していることが分かるかと思います。
アイゴが生きている時に、アイゴを触ったり刺激を加えると、この毒針を立てて威嚇してきますので、安全を確保する意味では、アイゴを締めた状態にしてから処理を進めた方が良いです。
捌くのが上手な方であれば、アイゴが生きている段階でも処理が出来るかもしれませんが、初めて捌く方は締めた状態で処理してください!その方が確実に安全です。
また、毒針の処理する時に安全を第一に考えるのであれば、少し厚手のゴムグローブ等を用意しておくと安心です。(私は掃除用の少し厚いゴム手袋を用意しました。)
毒針を親指と人差し指で掴んで開き、ハサミで切り落としていきます。切れ味の良い料理用のハサミであれば難なく切り落とすことができます。
下の写真は、実際に切り落とした毒針の写真ですが、この状態になっても針には毒が含まれています。捨てる際に、誤って毒針に触れたりしないように注意してください。
また、毒針は鋭いので、ビニール袋などは突き抜けてしまいます。
ごみ捨ての際に、ゴミ袋から毒針が飛び出しているということも有り得るので、キッチンペーパーで安全に包んで捨てるなどの心遣いも必要だと感じました。
一夜干しの処理方法
さて、毒針が処理出来たら一夜干しにするためにアイゴを捌いていきましょう!
毒針を除去したらアイゴをおろしていきましょう!
一夜干しにする際のアイゴのおろし方ですが、どのようなおろし方でも良いと思います。
3枚おろしにして骨の無い状態でも良いですし、アジの開きの様にスズメ開きを利用してもOKです。
我が家では、子供が食べやすいように骨はなるべく残しません。そのため、3枚おろしで処理していきました。
実は、アイゴの身って、それほど多くないんですよ。
お腹の部分には、ほとんど身が無く、皮一枚が残るくらいしかありません。
そのため、より多くの身を食べたい方は、スズメ開きにして干した方が良いかと思います。
捌き終わったら、塩水で15分ほど漬けておきます。今回は、塩水は海水と同じくらいの濃度で漬けておきました。
塩水につけると、魚の身から余分な水分が抜けてくれて、より旨味が凝縮されるようになります。
ベランダなどで一晩干して乾燥させる
塩水に漬け終わったら、網などを利用して一夜干しにしていきます。
天日干しでも良いのですが、今回は水分が抜けすぎない一夜干しを選びました。
ベランダなどの風通しの良い場所で一晩干して、朝になったら取り込んで冷蔵庫で保存しておきます。
そして、その日の晩に焼いて食べましょう!
一晩干した後、アイゴの身を触ってみて、表面は乾燥していて、実の中に少し水分が感じられる程度であれば完成です。
気候や時期によっては、一晩干してもアイゴの身が水っぽい状態のままの場合があるかと思います。その際には、正午まで干す時間を伸ばして乾燥を進めるようにして下さい。ただし、干し過ぎには注意です!
下の写真は、おろした直後と一夜干しにした後のアイゴの身の変化を比較したものです。
一夜干しにすると水分が抜けるので、白っぽかった魚の身の色が濃くなっていることが分かりますね!
スーパーマーケットで売っているアジの干物の状態に近づいたような感じがします。
[注意事項!] アイゴを捌く前に覚えておきたいこと
アイゴを捌く時に、多分誰もが驚くことがあります。
それは「内蔵の強烈な臭い」です。
アイゴは海藻を食べて生きており、腸の長さも他の魚に比べて長いため、非常に内臓が臭いです。
家で捌いた時には、キッチンにその臭いが充満し、気分が悪くなってしまう方もいるかもしれません。
そのため、アイゴの処理においては、釣り場で内臓を取り出すところまではやってきた方が無難です。
私は自分の家のキッチンで捌いてしまったのですが、内臓のとても強烈な匂いで、一時家の中が凄い臭いに包まれました…。
アイゴの一夜干しの味は!??
さて、アイゴの一夜干しをコンロで焼いてみました!
骨を完全に除去したので、少し身が丸まってしまいましたが、こんがりと良い色に焼けています。
コンロで焼きながら感じたことなのですが、やはりアイゴには独特な香りがあります。
他の魚には無い香りで、初めて嗅ぐ香りでした。
決して「臭い!」というような香りでは無く、少し癖のある香りという感じですね。
そして、実際に食べた感想ですが…
「アイゴの一夜干しは旨い!」
想像以上に味わい深い白身を持っています!
海釣りで釣れた時に、今まではリリースしていたのですが、「もっと早くにアイゴの一夜干しに出会っていれば良かった…」と素直に思いました。
そのままだと少し味が薄い感じがしたので、ポン酢をかけて食べてみたのですが、ポン酢に凄い合います!また、醤油にも合います!
上で記載した独特の香りですが、身を食べている時にはそこまで強く感じません。
そして、食感や食べやすさですが、身は少し硬めで、皮と身がお箸では剥がしにくかったです。時期的なものや焼き方、一夜干しの方法などにも依るのかもしれませんが、若干食べにくい印象です。
食感は、アジやカマスの一夜干しとは完全に異なり、最も近い食感はフグだと思います。
この記事の終わりに
この記事では、海釣りで釣れる「アイゴ」の一夜干しを紹介させていただきました。
アイゴは冒頭でも述べた通り、海釣りの外道として考えられることが多く、ほとんどの方がその場でリリースしてしまっていると思います。
しかし、大きく育ったアイゴは食べる身も多く、かつ一夜干しで美味しくいただけることがわかりました。
毒を持つ魚には良いイメージが無かったのですが、これだけ旨味のある魚であれば、今後はリリースせずに晩御飯や酒の肴にしたいと思います。
毒針だけは注意して処理することが必要ですが、皆さんもアイゴが釣れた時には、一夜干しで味わってみてはいかがでしょうか?
きっと、アイゴに対するイメージが一気に変わると思いますよ!?
この記事で紹介したアイゴですが、神戸のアジュール舞子で釣り上げたものになります。下の記事で、その釣り方などを紹介しています。